忘れていた過去



キャーー!!

夏祭りの賑やかな雰囲気が一瞬で一変した。


そうだ。

そうだった。

全て思い出した私は瞬時に先輩を見た。

先輩は私をかばうように覆いかぶさりそのまま倒れた。

先輩の背中から血が流れている。


「いやぁ!先輩!やだ!!」


目の前で起きている現実から逃げたくなり私は再び目を強く閉じた。


そして目を開けると…


2017年8月1日


昔の記憶の様な夢と蝉の鳴き声と共に目が覚めた。

ってあれ。

戻ってきた。

これって、夢だったの?それともタイムスリップってやつかな?


なんであろうと先輩の事は、残念ながら夢ではなく、中学生の頃本当に体験した事だ。


あれは、今から3年前の出来事。

綿飴の屋台の近くに居た怖いお兄さん達が巻き起こした事件。

喧嘩を拗らせた彼らの内の一人がナイフを持って暴れ出した。

そして無差別に祭りに来た客を切りつけた。

気付くのが遅く逃げ遅れた私をかばい刺されてしまったのが先輩だった。


忘れてはならない記憶。


でも1つだけ妙な点がある。

私はこれ以降の記憶も無ければ、先輩が助かったのかどうかも知らない。


私の記憶が無いのは、ショックのせいだとしても先輩の事は分からない。


なぜなら皆、口を揃えてそんな人は知らないと言うのだから。

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