蘇る記憶


ん?、まって…

ちょっと待てよ、落ち着け私。

「自転車でぶつかって、海から落ちて…ってあれ?私死んだの?だから昔の事思い出してんの?あ、これって走馬灯ってやつだっけ?あれ?えっと………」


「おまえ、何一人で喋ってんの?あぁ、まさか俺と居て緊張してる?」


甚平を着て隣にいるのは、確か中学の時の先輩だっけ?えっと、田島先輩だ!

って事は今、私高2だから、3年前だ…

あ、今先輩なんか聞いてた…

答えなきゃ!


「え!なんですか!!」

「は?…まぁいいや」

先輩は楽しそうに笑いながら、綿飴の屋台の裏にあるベンチに腰掛けた。


ベンチの隣では怖いお兄さん達が何やら揉めているようだった。


「綿飴のとこで喧嘩なんかしてたら、子供怖くて近寄れねーよな…」

私が怖いお兄さん達を見つめていると

「んまぁ、座れよ」

と猫を見るような優しい目で私を見つめながら先輩はトントンとベンチを叩いた。

「あ!はい!」


ああ。

そうだ、この日だ。先輩に告白されたの。

私が中学2年生の時転校して来た人。

それが田島先輩。

格好良くて誰にでも優しい先輩はすぐに学校中の女子に囲まれる存在になった。

ちなみに私もその一人な訳で、今の状況は当時の私からしたら夢のような話だった。


「俺さ、好き好きゆってくる女嫌いなんだよね。軽いって言うかなんつーか?分かる?」


「あ、はい、分かります。好きって簡単にいえる言葉じゃないですよね。」


昔の記憶を頼りに同じ言葉を返す事にした私は、さっきまでの衝撃よりもこれから告白されるのが分かっている衝撃の方が大きくなって体中が心臓になったのか?と言うぐらいバクバクしている。


「だよなぁ…。でもお前は違うよな。」

「え?」

「あ、あれだよ、お前はガツガツして無いし、俺の理想ってゆうか…」

「え…っと…」

「お前、いつも来てくれてたのに何にも話しかけてこなかったろ?ただ遠くから俺を見てたよな?」


記憶と言うものは意外と頼りにはならず、私はすっかりこの後過去に自分が言ったセリフを忘れてしまった。

同時に先輩にそんなにも見られていた事を思い出してドキドキが倍になった。

私は慌てて言葉を返した。


「先輩はどんな人が好きなんですか?」

「だから俺はお前が!…あっ…」


食い気味に先輩が答えた時…




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