〜消えたふたりの物語〜
よなんつ✩
〜消えたふたりの物語〜
その町には、とある伝説があった。内容としては神隠しと呼ばれるものだろう。
夏の一定期間、ごく短い間にのみ海が七色に光るのだという。
そして、その光を見たものはただ1人、最も愛した人を除いた周囲の人々の記憶から消え、町からも姿を消し、そのまま戻ってくることはない。
これは、そんな伝説に巻き込まれた2人の恋の物語。
海に浮かぶ、とある島国の小さな街に暮らす少女とその隣人で幼馴染の少年。
よく晴れた夏の暑い日、少年と少女はその家族とともに近くの海辺へ遊びに出かけた。
そこで、少年と少女は海の水面が七色に光り輝く瞬間を見た。
その日は何事もなく遊び、翌日に勉強を見てもらう約束をして家に帰った。
しかし、約束をしたのにも関わらず少年は現れなかった。
その次の日も、その次の日も。
そしていつの日か少女は気づく。
少年を覚えている人が自分しかいないことに。
少女はなんとしてでも少年を戻そうと、毎日のように日が暮れるまで伝説について調べていた。
しかしどんなに調べても同じような内容ばかり。
結局自らの力ではどうにもできないまま、あの出来事から3年の月日が流れた。
あの出来事から4年目の夏のある日、少女はいつものように図書館に向かう途中で町内に住む1人の女性と出会う。
その女性は町に伝わる伝説についてよく知っていた。
その女性と話しているうちに少女は気づく、あの美少年が消えたのは、その伝説によるものではないかと。
そして自らもあの日、その光景を見ているのだ。
女性の話によれば、今まで同じように消えたとされる人々は皆、15~20歳の若者なのだという。
その話を聞き、少女はまだ19際の今ならばもう1度彼に会えるのではないかと思い立った。
その日のうちに、家族や友人との別れの覚悟を決めた少女はあの日以来近づくことのなかったあの海へ向かった。
女性と出会い、両親たちへの別れの覚悟を決めた翌日、海へと向かう少女。
その日は偶然か、4年前に少年が消えたのと同じ日だった。
少女は久しぶりに訪れた海を見て、1つの記憶を思い出した。
それはあと15cmぐらいで届きそうな少年の手。いつも少女を待っていてくれた少年の笑顔だった。
その記憶を懐かしく思いなから、あの美少年と見つけた思い出の洞窟へと向かった。
洞窟から海を見たその時、少女はまた4年前のように水面が七色に光る瞬間を見た。
その後、少女は何事も無かったかのように帰宅をし、家族との最後になるであろう食事を食べた。
その夜、少女は不思議な夢を見た。
4年前のあの日の格好をした少年と、楽しく話していて、話をしているうちに少年はだんだんと積年の姿へと変わる夢だった。
翌朝夢から目覚めた少女がいたのは、見覚えのない場所だった。
しかし、どこか懐かしく感じるその光景に首をかしげつつ、その場で状況整理をした。
その場所の周辺を歩いて出会った人々の話から、伝説のきっかけとなった出来事を知った少女。
周辺を歩きつつ、人々の話を聞くうちに、この町も、元々いた町とほぼ変わらない広さで、図書館も多数存在することを知った。
少女は近くの図書館にあったこの町の地図を見つけ、それをコピーし、どこを探したかわかるようにした。
少年を探しながら、この伝説のような突然の別れを経験する人が減るように、いつかは出なくなるようにと日々、この地に伝わる伝承と自らの知る伝説について調べ続ける少女。
ある日、5個めの図書館で伝説について調べているのだという青年に出会う。
その青年と話すうちに、彼こそが自らが探している少年であると気づいた少女は、自らがあの日別れてしまった少女であることを打ち明けた。
その後、青年と少女は毎日のように伝説について話し合い、互いに信頼を深めつつ、多数ある図書館へ来る日も来る日も、たくさんのことを調べていった。
再会してから2ヶ月たったある日、青年はあの出来事の後、こちらの世界に来てからずっと、少女にもう一度会いに行くために世界を渡る方法について調べ続けていたのだと言った。
少女は、青年も会いたいと思ってくれていたことが嬉しくて、自らがこっちに来た理由を青年に打ち明けた。
自分も会いたくてこっちに来たのだと。
お互いの気持ちを確かめ結ばれた2人は、怖くて伝えることの出来なかった情報を明かし、やはり元の世界には戻ることは出来ないのだという結論に至ってしまう。
ずっと目を背け続けていた事実。
突きつけられた答えは残酷だった。
しかし、ならばせめて出来ることをしようと考えた2人は、元々いた街の人々が神隠しにあい悲しむことがないように、こちらの世界に暮らしている人々が苦しむ事がないようにと原因を解決すべく、奔走した。
ーーそうして2年たったある日、全てのことを解決した2人はこちらの世界で幸せになった。ーー
〜消えたふたりの物語〜 よなんつ✩ @yonantu
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