第2話人間の容姿に騙されるな!!

 眼前には、見た目の容姿に反して豪快に剣を振り回して、敵を追いかけ回す女性職員の姿があった。既に息遣いは荒く、汗も滴り落ちているというのに眼光は殺気を全く衰えさせていない。

 

むしろ剣を振るごとに鋭さが、増しているように見える唇の横には、光沢のある液体が少し垂れ恍惚の表情で剣を縦横無尽に扱っていた。

「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ねぇ――」と雄叫びを上げて敵の首を飛ばす女性職員、達成感と共に疲労感もやって来たのだろう。

 その場に剣をさして自身も地に手をつき肩で息をしている。何故にこの様な有様になっているのかと言うと、冒険者組合の仕組みで、担当冒険者がある程度のレベルに達するまで、担当職員がレベル上げを手伝ってくれるのだ。冒険者組合から支給されるカードに自分の能力値が記載される仕組みだ。


 しかし、この様では自身のレベル上げには到底繋がる訳も無く少しは自重して欲しいと言うのが本音である。


 今回受けた仕事内容だが、ケロスというモンスター討伐の依頼を半ば強引にこの蹲っている女性職員により請け負わされた。

 比較的に楽な、仕事になるかとにわかに、期待したのだがこのモンスターは気味が悪い、緑の肌に、パッチリと大きな目に俊敏そうな引き締まった足を持っていて、首は三個に分かれている。


 その異様な見た目に、驚愕して気絶してしまう冒険者を三頭の頭から舌が次々に伸びてきて、それぞれの舌に躰を引き裂かれ口に運ばれるのである。被害は意外に大きく、繁殖期には山羊や牛などが居なくなるなどの、被害が多々冒険者組合に家畜業を営む町民から寄せられるそうだ。

 

 さながら田んぼや畑で見る、雨蛙の拡大版である。そのケロスをあろう事か、一瞬で切り裂き、突き殺す冒険者職員。今回の仕事もせっかくこんな場所まで出向いたというのに、徒労に終わったのである。まぁモンスターを殺すことによって還元されるレベルアップなど、俺には些細なことだ。モンスターより余程、凶悪で、醜悪な存在がいることを俺は知っている……


「私は今日も真っ白に燃え尽きて、疲労困憊なので後の処理を任せても?」

と草原に躰を投げ出して、寝そべっている女性職員がこちらに首だけを持ち上げて叫んできた。このまま放置すれば他のモンスターに喰われたり、もしかしたら陵辱されたりするのだろうか?そんな事を妄想していると、再び居丈高に叫んできたので、散見するモンスターの血の結晶を拾い集めることにした。


モンスターの屍体の回収は、冒険者組合に任せることにする。何はともあれ今回も一日生きられるだけの、報酬が貰えそうである。


 冒険者組合に戻り、今回の仕事の報酬を受け取り、モンスターの血の結晶である結晶石も鑑定して貰うことが出来る。この結晶石は稀にしか拝むことはできないが運良く拝むことができたのである。鑑定が終わり臨時収入を得て、家に帰ることにした。帰る途中に商店に足を運び生活物資を調達することにした、過去の経験から面が割れないように、偽装の為の仮面も購入することに……


家に帰って狩りの支度をしていると、いつの間にか太陽と月が役割を交代していることに気づく、窓の外は漆黒の闇に満たされており月の光だけが町を照らしていた。少し風が出てきたのか木々が騒しく音を立てている。あまり血臭や返り血を残したくないので、服装は水分を弾きやすい素材の服をあらかじめ用意しておいた。


 今日の狩りは素手で行く、ことにしようそう呟き家の玄関を開いた。

 実は,冒険者組合にはモンスター関連とは別に様々な仕事が他にも存在する。凶悪なモンスター討伐は相当なレベルの冒険者達からしか脚光を浴びることは無い。


 他の冒険者達も俺と同様に職員が無理矢理仕事を持ってくるか、自身相当レベルのモンスターを狩るかそれが無理なら、冒険者を辞めて料理店や酒場などに転職するしかない。


俺はその中から自分に合った仕事が見つけられたのは幸いした。内容は危険人物の捕縛・抹殺である。この仕事も中々に人気が無い、というのも頭が悪い雑魚モンスターでは無く人間相手なのだから当然である。しかも、その中でも狡猾・残忍な危険人物の集団を相手にするのは酷な話だろう。でも俺はそれが許せないでいた、人命を弄び、人々を物同然に扱うその所行万死に値する。


そんな事を思慮していても所詮は偽善である、用は気にくわない癇に障る・癪に障る奴を殺したいだけ、それだけである。その冒険者組合内の張り紙に昼間女の子に乱暴を働いていた者の、顔写真と名前が張り出されているのを、結晶石と報酬を換金している間に見ておいたのである、その張り紙にはおおよその潜伏場所もご丁寧に記されていた。奴らの居場所は、山間にある洞窟付近だという。


「さぁ行こう!!」一人気合いを入れて歩き始めることにした、山間と言うだけあって辺りは鬱蒼とした森林が広がっている。道には、春泥があり道の端には毒土筆が芽吹いていた。次第に空は霾晦していき、月の光も霞んできた。


 ようやくそれらしい洞窟を、発見することが出来た。一息吐いて準備していた松明に火を灯す、予期せぬ事態に見舞われるかもしれないので、何事にも準備だけは怠ってはいけないと常日頃からそういう姿勢で生活するように心がけていたのが幸いした結果だった。流石にこの漆黒の闇の中で魔法も使ってくるかもしれない対人戦だ!!石橋を叩いて渡るどころか、新築した後に、飛行魔法で渡るくらい用心した方が良いだろう。


 ともあれ夜行性のモンスターに襲われることも無く無事に辿り着けたことを幸運に思う、洞窟の入り口付近に身を潜め中を窺ってみることにする、中からは

「助けてー止めてえー!!」などの女性の悲鳴混じりの声が聞こえたり

「もっとやれ!!」などの下品で卑猥な男達の声が洞窟の外まで木霊していた。

俺は居ても経っても居られる心境では無い状態になっていた。今にも飛び出しそうになったが、今一度冷静になるように心を落ちつけられる理由があった。


 今飛び出したら、正面衝突を強いられる事になる、これでは女性は勿論助けられないし、あの男達に殺られるかもしれないし、逃げられるかもしれない。


 幸い女性を殺す様な言動も今のところは聞こえてくる様子も無い。暫く待った方が得策だ。暫く待っていると、予想通りに鼾をかいて寝始めた。


 相当に深酒をしていたらしい、素早く洞窟の中に侵入し、男達が寝ている部屋の入り口付近から様子を見てみると、女性は仰向けの状態で顔を手で覆い、未だに泣いていてその手には手錠が嵌められており、足には錘の吐いた足枷が嵌めてある。


 成る程、だから女性は逃げられ無かったのかと納得した。女性の足は赤黒く変色はしていないようで、血が留まる程強く締め付けられてはいないようだ。


 女性をお越し肩に手を置いた瞬間、一瞬だけ悲鳴を上げられた処を慌てて口を塞いだ。そして耳元で。「助けてやるから大人しくしていろ」と囁いた。女性は、無言で頷いて答えてくれた。


「いつ頃から此処に?」俺が女性に問う女性の躰を観察してみると襤褸をまとい手や足などには蚯蚓腫れが見えるおそらく拷問を受けたのであろう。

 俺は回復魔法をかけてやることにした、徐々に傷が塞がってきて痛みが無くなってきたのか、女性は泣きっ面でこちらを見上げ言葉をやっと発してくれた。


「昨日、この付近に自生する植物を取りに来た帰りにあの人達に捕まりました」

余程、悔しくて、悲しくて、何故私がこんな目に遭うのと、彼女は思ったはずだいくら俺がその気持ちを推量しても仕切れないだろう。


 現に彼女の目からは、絶え間なく熱い物が滴り落ちている。俺は彼女の手錠と足枷を引き千切り逃げるように指示した。彼女は何度も頭を下げて礼を述べていた、その背中が見えなくなると、死刑を執行することに、まず俺の妄想・願いから生まれた権能を発動すると、鼾をかいて寝ている内の一人小太りで身長も低く頭の薄い男の足を掴み、農作業で用いる鍬の要領で地面に叩きつけた不快な音がしたが何度も同じ作業を繰り返した。


 頭が割れて血が止め処なく流れ出ていて男の歯や頭蓋骨、骨などが飛び散り辺り一面血の海と化した。


 だがこの位で許されるわけも無く、再び作業を繰り返すことにした。最終的には下半身だけ残された屍体が手にあった。


 それを無遠慮に壁に投げつける、二人目は壁にもたれて眠っている、細身で身長が高く手足が長い男「このごみが!!」短く吐き捨てると、その男の下腹部を前蹴りで押し潰す。

 

余りの痛みで飛び起きそのまま蹲る体勢になった男の肩を掴み立たせると両手で耳を掴み。引き千切った。噴き出す鮮血。


 耳元を再度に掴み直し先ずは鼻に向けて頭突きした。鼻が折れる音が俺の額に響くが気にせず、続いて、額めがけて頭突きその作業を頭部が無くなるまで繰り返した。

 

 三人目は顔が整っていて遊び人の印象が窺える男だこいつは一人だけベットに眠っておりおそらくこいつらの中では一番上の立場であろう何故なら昼間に助けた女の子の首飾りをつけている。

 

 その子の苦痛に満ちた表情と少し前に救った女性の顔が脳裏に蘇った。その瞬間。目の前に眠る男に拳を振り下ろしていた。まず始めに、右手を殴り男の肩口から先が吹き飛んだ。次に左腕をねじ切り。


 右足を握力だけで握り潰した。その一瞬の出来事に男はゆっくりと瞼を開き自分の今置かれている状況が、理解できていない様子だ、右手、左腕からは夥しい量の赤い水が噴き出している。

 

 男はそれを見回し、悲鳴を上げそうなになったので、喉を潰した、男は不自然な呼吸音を鳴らしている。男の水月に全力の拳を突き刺した、男の躰には穴が穿たれ出血による死か、今のが止めになったのか知らないが、動かなくなった。


 それでも俺は拳を振り下ろし続けた。体に穴を穿ち過ぎて、原型が人間だか、なんだか解らなくなった頃ようやく正気に戻った。


 屍体を袋詰めにして、洞窟を出る。外は明るく成りつつ、遠くには太陽と雲が追いかけっこしていて、太陽の方に軍配が上がったようである。木立の間から陽気が差し、木々は生気に満ちあふれていた。

 

 山を下りる途中に牧場を発見し豚や達に還元するように人肉を投げ入れた。

余程腹が減っていたのか、行きよいよく人肉を貪り始めた豚達を満悦に暫く眺めて踵を返すことにした。


また五月蠅い冒険者組から来る女性職員の顔を思い出しながら・・・・・・


 

 


 



 



 






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こんな世界だったら 災渦 @godorochi1221

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