こんな世界だったら
災渦
第1話愚行と出合い
「どうしてこうなった?」俺は、鶯や河原鶸が生気に満ちていて、普段なら気持ちが高揚するであろう囀りを聞きながら、朝日が登り霞んだ空を見上げそう呟いた。自分の隣にいた女性が一歩踏み出し、振り向いた後、一度みんなを見回しこう告げる
「皆、暴れなさい!!」その言葉を聞いた直後、仲間の一人が駆け出し甲冑を着て武装した兵団に、突貫していく。
その男は、手に持つ包丁で兵士たちの目や、顎の下から包丁を突き刺し、次々と兵士たちを血の海に沈めていく。
その後、次々と残りの仲間たちが後を追って駆けだした。俺はそれを見送りながら、目を閉じて過去の記憶の糸を辿ることにした。
「あれから色々な出会いがあった」
最初の出会いは、俺にとって最悪の出会いだった……
いつものように、部屋で本を読んで過ごしていると、唐突に部屋を殴打する音が聞こえた。
「また奴が来た!!」俺はそう叫び、ベットの下に布団に包まったまま素早く隠れた
「ジョイソンさん居るのは解ってます早く出てきなさい!!」と叫ぶ女性の声が聞こえた。暫く息を潜めていると、ドアの鍵を開ける音がして、部屋の中にの足音が入って来る音が聞こえた。
女性が、ベッドの下に隠れた俺に憮然とした態度で問う、「何してるんですか?」俺はその問いに……無言で返答することした。
すると、ベッド付近まで、女性が歩みを進め、唐突に俺を引っ張り始めた。
「止めろ―!!何をする職員がこんな事をしても良いのかぁ―!!」と叫ぶ俺を余所に精一杯力を込めて、部屋の外に引きずり出そうとする。
女性職員。派手な印象の金髪とは、裏腹に、髪型は柔らかい印象を与えて、緩く長い背中付近で切り揃えられてられている。瞳は蒼く透き通った碧眼で顔の造形は、親の顔を見てみたいなと、思慮してしまうほど、整っていて服装は、冒険組合から、支給されたであろう、黒のスーツに、紫色コートを羽織っている。
身長が低い割には、出るところは出ていて特に、一部分は出すぎだ。はっきり言って、好みの女性に分類されると、言ってやらなくもない。本人には、言わないが…今現在では、好みの女性、に引きずり回されている。 状態に客感的に見ると、なっている状態でもある。
必死に抵抗を、続けてはいるものの、この女性職員は見た目に反して腕力が強い。最後の砦のドアノブに捕まり、抵抗を続ける空中に一直線になった状態になった頃、女性が最後の力を振り絞り一気にドアノブから、引き剥がされた。
相当、俺の行動に憤りを感じていたのだろう、あろう事か、そのまま二階から一階まで引きずり回す気らしい。
「止めてぇーマジでそれは洒落にならねぇー!!」と説得を試みるも、女性職員は既に鬼の形相となり、俺を引きずり回す、体勢になっていた。
一階への階段が続く廊下の途中でも、敢えてなのか?わざとなのか?廊下の壁にぶつけられる俺、女性も疲労がたまってきたのか、息遣いが荒い。
「貴方が悪いのよ!!こんな状態にしたのも貴方!!全部貴方!!貴方!!が悪い」
と俺を、引きづりながら罵倒する女性職員 、俺はその凶行に壁の淵等に手をかけて抵抗していた。しかし、女性職員の腕力が勝っているのは、顕著だ。次第に階段に近付いて行き。
いよいよ一回へ繋がる、階段に差し掛かる。
覚悟を決めて、防御体制に移行した俺に女性職員が、息を荒くしながらも口の端を緩め笑顔で告げてきた。
「最終警告です!!これから貴方は何をされるか想像出来るよね?」と一言、俺はそのと問いにうつ伏せの状態で、上半身だけ振り向きながら一言。
「拝承しました、貴方の言う通りにします」
すると女性職員が笑顔で「宜しい!!」と笑顔付きで答えたくれた。のだが、階段に足を進めた。自分でも、こんな声が出るのかと正直に驚いた。
あまりの痛みで、意識が朦朧とし一頻り痛みにのたうち回った後、やっと視界の焦点が徐々に定まってくるのを感じた。
痛みがまだ残る胸の部分に、手を当て痛みが治まるのを待っていると、俺の正面に悪びれる事無く、堂々と回り込み腰を落として女性職員が口を開く。
「女だからといって嘗めないでね!!貴方みたいな人が居るから毎日鍛えてるんです」と腰に手を当て、偉そうに、誇らしげに言ってくる。悪魔の様な女だ……あまり抽象的な表現は、好きじゃないがこの時、そう思った。
俺はその言葉に一言で返す、返事をする、返答をする事にすることにした。
「あーそすか凄いっすね」思ったことをそのまま言葉に、しただけなのに。
女性職員は素の態度が、癪に触ったのか不遜な態度だった。
ここまでされて、引き籠っているのも、流石に、我ながら、みっともなく思い渋々本当に渋々いつもの仕事着に着替えて仕事に出向くことにした。部屋を出ると、女性職員が待っていた。
「さっきはやり過ぎました、お許しを」
そんな事を、頭を下げながら言ってくる。おや!?珍し事もあるものだ彼女にも何か思うことがあったのだろうと、思慮してしまった。
「別にいいっすよいつもの事でしょ?」
と手を上げながら答えてやると、
「それもそうですね」笑顔で返してくれた。
二人一緒に、何時ものように、冒険者組合に向かうことになった。
何故に引き籠りが、働かなければならなくなったのかと言うと。王様が労働者の減少と引き籠もりがいる家庭の、親の死後の悲惨さに嘆いたからだ、。王様が年々に減少していく労働者減少に悩んでいるところに各地の貴族達から悲願の声が挙げられた。
それに対応するべく、この征策に乗り出したのだ。試験実験のため、冒険者組合の女性職員に何人か引き籠りの家に訪問して貰い何とか魔法を、見せて貰うことが出来たらしいのだが、その力量は凄まじかったと噂に聞いた。
あと引き籠もりは日頃から、妄想・空想しているせいか魔法のイメージ化がスムーズだ、そのなかでも、魔法意外にもその上の固有スキル権能まで発現する物まで出る始末である。
この現象に着目した王が実施したのが、引き籠もり撲滅計画である。この征策の恐ろしいところは、個々の引き籠もりの、好みの異性をどうやって調べたのか完璧または、近しい人物を的確に派遣してくるところである。
各地の女性職員が男性の引き籠もりの家に行き、女性の引き籠もりには容姿端麗の男性職員が派遣される事になる。
何故にモンスターと戦わされるのかというと、この町は、冒険者とそれと類するk鍛治屋や、荒くれ冒険者に飯や酒を提供する店が集まる冒険者の町だからだ。
働くものが居なくなれば、町の外に凶悪なモンスター達が溢れることになる。その為、精神修行や肉体鍛練のために強制的に冒険者にするように、王が命じたのである。いわゆる職業訓練だと俺は解釈した。
とは言え、国自体がその征策に、乗り出した以上俺も対象の例外ではなく。この征策の対象として、ターゲットにされたのである。
元々、その日暮らしのため、最低限の装備と、魔法だけで、ゴブリンに始まり、低級モンスターを倒して、家の家賃と最低限の生活費を稼ぐと引き籠る。
という生活サイクルを、送っていた俺だが重度の引き籠りをして、親の脛を囓りすぎてしゃぶり尽くして、脛も無くなっていた奴等には、本当に気の毒な話である。
そんな事を、考慮している内に支度も終わり、家の玄関を二人で出ることになった。
町は、俺と違い冒険者として、冒険に出る物と俺より随分引き籠り生活が長かったのか、嫌々、職員に引っ張られる物も目にできる、俺は、横を歩く彼女に眼をやり考慮する思えば、俺は比較的にまともな人に幸運にも、出会えたらしい。
職員の手が足りない時等には、冒険者に引き籠りの連行を依頼する時もあると噂で聞いたことがある……屈強な体躯をした冒険者に無理やり冒険者組合まで連行される事を思うと、悪寒がした。現に目の前で、悲鳴を上げながら引きずられている引き籠りがちらほら見受けられた。
町は、レンガ作りの家が多く、商店や武器屋や等で溢れており、中々に賑やかな、街並みである。町の路地裏には、飲み屋等の店も見受けられる。町の入り口や町の端にはモンスターが入ってこないように、頑丈な壁が配置され、警備は万全のようだ。壁の材質は寡分にて知らないが……そんな事を、考えていると。
女性の声にならない、悲鳴が路地裏の人目につかない場所から聞こえた。俺と女性は顔を見合せ悲鳴が、聞こえた付近まで近付き、顔だけ物陰から覗かせ様子を窺って見ることにした。
見てみると、女性が三、四人の男たちに囲まれ殴打されてた顔は無残に腫れ上がり口からは血を流している。
「何だどうせ盗人かなんかだろと」呟きその場を後にしようと思い踵を返す事にしようとしたのだが……
背中の服を引っ張られていることに、気付いた。
「何を見て見ぬふりしてるんですか!!」
女性職員が鬼の形相で俺に超至近距離で言ってきた。
俺は、その言葉に手を横に振りながら答える
「何ってなに?普通の対応でしょ?」
その答えに女性職員が、俺の胸ぐらを掴みながら叫ぶ!!
「貴方は本当に男なんですか!!」
俺はその問いに「えぇ性別上は」
そんな口論をしている内に、向こうの方に動きがあった。また静かに動向を見守る体勢になる俺達。しかし、改めて見ると不思議とその女性から目が離せない自分が居ることに気づいた。
顔は腫れ上がってはいるものの、元は相当な美人であった事が窺える。
まず、身につけている物がこの場所に相応しくない。誰からも高価だというのが顕著な真っ白なドレス、盗んでくれと言わんばかりの、豪華な装飾品、こんな女性が、何故こんな場所に?などと思っていると。
男の子一人が首に下げてある装飾品を、無遠慮に引きちぎった。そして、他の男たちも金目の物は無いかと女性の躰を探り始めた。
暫くすると、金目の物は無かったのか、その場を立ち去って行った。俺達は、素早く女性に近付き質問を唱えた「生きたい?死にたい?」すると女性は痛みで悲痛な、表情を浮かべながらも微かに口を動かし答えてくれた。
「生きたいの我を助けてはくれぬか?」俺は、女性の頭を持ち上げ膝の上に乗せて、回復魔法ヒールをかけてやることにした。
治療が進む中、気付いた事があった。やはりこの女性の容姿端麗だった。
歳は十六かその位だろうか、柔らかな印象を与える白銀の長い髪、透き通った青い瞳とても美人だ。
この人自身を売り飛ばした方が、余程、高い金が貰えたろう。等と考慮していると、傷が良くなってきたのか。
その女性が口を開き、「有難う、かなり楽になってきた何かお礼をしたいのだがどうじゃ?」
俺は、手を横に振りながら言う「そんなの要りません、情けは人の為ならずって言いますし自分の感情の為に行っただけですので」そう言うと、女性は残念そうな顔をしていた。
そして、俺達は、その場を立ち去ろうとし足を停める、「では、また同じ時間にこの場所で会いましょう」そう言いうと素敵な笑みを返してくれて「良かろう!!」という元気な返事をしてくれた。
その日の夜に彼女を襲った族は消えることになるだろう……
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