第2話神の魔法はかなり、やる

「行ってきます。」


俺は家を出た。


見に馴染んだ制服を身に纏い、春の柔らかい日差しを浴び桜の花びらが舞う中、歩を進める翼は、感嘆していた。


ー素晴らしい!実に、実に素晴らしい!


すれ違う人々は普段なら翼を見つけるたびに反応を示すのだが、誰も反応しない。


「感謝するぞ神よ!!俺は今、幸せの絶頂にいる!」


人混みで叫ぶ、しかし誰も反応しない。


「はーっはっは!はーっはっは!」


俺は高笑いしながら学校へ向かって行った。


【私立聖修学高校、ごく普通の生徒とごく普通の施設が整ったごく普通の学校。翼は現在二年生である。】


教室に入る。


いつもならキャーキャー言う女子も寄って来る男子も一人もいない。

それぞれが俺のいない日常を、楽しんでいる。


ー 本当に最高だ。あの幼女、なかなかやるではないか。


ーーー放課後、HRにて、


クラス委員の工藤寧が前に出て口を開く。


「二の一の一日旅行の班決めしまーす!」


ー まずい。


俺は絶句した。

魔法のせいで気づいてもらえないじゃないか。


ー 物は試しだ。


俺は隣の人の肩を叩く。そして黒髪を掻きながら話し始めた。


「なぁ、今回どこ行くんだっけ?」


「あ、遠藤君、居たんだ。今回は日光東照宮に行くらしいよ。」


いつもはメスの表情をしながら話しかけてくる女子も素っ気ない対応。


ー この魔法の効果は自分で話しかければ緩和するのか、つくづく使い勝手がいいな。


思わず顔を綻ばせるも、話し終わった女子には気づかれない。



こうして班もスムーズに決定して、この日を終えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

遠藤君の日常は腐っている。 桐音翼 @kirine320

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ