16話 ファンの力

せーのっ

「ヒナ、頑張れー!」



突如として俺の前に出現した厚い声の壁。

それは大きな水風船のように重く、それでいて小さなシャボン玉のように優しかった。

不穏な空気は一瞬にして吹き飛ばされ、ヒナの耳にも、その声は届いた。



ヒナの顔が少し上がる。

「・・ばらなきゃ」


美優とミーシャに優しい笑顔が戻る


太陽が雲の影から抜け、ステージに光が差し込む。


足を肩幅に開くヒナ。


スカートがかすかに揺れる。


胸がゆっくりと膨らみ、肩があがり、下がる。


「がんばら、なきゃ!」

ゆっくりと上がった顔には、笑顔が。


ヒマワリのような、あの、笑顔が!


「私は、ヒナ! しゃべるの、あんまり、得意じゃ、ない」


「でも、頑張る! 私、 アイドルだから!」





ライブ会場は、まるで、新しい世界だった。

美優の作り出す、力強い大地。

ミーシャの作り出す、生き生きとした生物たち

ヒナの作り出す、あたたかい太陽。

新世界はステージから半円状に広がり、そこにいる観客のみならず、その範囲にいる、すべての生物と無生物が、彼女たちの姿を目に焼き付けた。



ライブ後の反響は言うまでもないだろう。

頭のかたいお偉いさん方といえど、彼女たちの渾身のパフォーマンスを見て、NOと言うことできなかった。



ライブから3日が経った。

妹たちの活躍の場は、これからさらに広がっていくことだろう。仕事の依頼もすでに何件か来ている。ファンの人数も増えた。熱烈なファンもできた。



ライブ終わりの3人を思い出す。

興奮で泣きそうなのは、俺だけじゃなかった。




俺は、これからも、こいつらの 、一番のファンだ。

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妹をプロデュースして、アイドルにしたいと思う @iberico

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