幕間 リザのある一日~もふもふな日~

*すいません。どうしても我慢出来ずに勢いだけで書きました*



「……っっっ」

 リザは今興奮していた。

 もう興奮しすぎていて荒い鼻息ともに、もしかしたら出てしまうかもしれない鼻血を押さえる為に、鼻と口を両手で押さえている程に。

 でも隠されていない目が、しっかりと見開かれて興奮具合を語っていて、押さえていても無駄な努力となっていたが。


「……リザ。。。お願い、押さえて。。。じゃないと強制退場にしなきゃならなくなるよ?」

「うっ、うううううううう。そんなの、イヤーーーーっっ!…これでも頑張っているのよ、ちょっとだけ、もうちょっとだけ大目に見てちょうだい、ララ」

「…もうちょっとだけね。それでもリザがその状態だったら今日はダメということで」

「ううううううう。が、頑張る」


 はい。私は変質者ではないですよ。

 鼻血はまだ出てませんからね!押さえてますけど、出ない、と、思います。うん。


 だって、仕方ないのだ。そう、これは仕方がないことなのだ。人の三大欲求は食欲、睡眠欲、そしてもふもふ欲!!

 そのもふもふ欲に支配されてしまうのも、仕方がないことだと思うのです!!


「いやいやいや、声に出てからね、リザ。もふもふ欲なんてリザくらいしか三大欲に入れないからね?」

「えええっ。そんなことないわよっ!もふもふに魅了されない人なんていないに決まっているわ!」

「…リザ。今日も退場させるわよ?」

「ああああああっっ!そんなご無体なこと言わないで、ララっ!」


 そう、もうおわかりですね。今はもふもふの園に来ています!


 もふもふの園は小さい子供がいるお母さん達が、ここに来て安全に暮らせるようになったので、働きたいという人の為に造った保育園だ。ここは当番でお母さん達とお年寄り達で見て貰っておいるのだ。


 集会所では今子供達に文字の読み書きと計算を教えている。その時間が終わって年長は仕事に行き、小さな子供だけ残して保育園にしたのだ。


 だけど私は立ち入り禁止だったのだ。今日までは。

 そこは勿論色んな子供がいるけれど、もふもふな子、かわいいお耳と尻尾の子がいるから、なのだ。

 そう、目の前に!塊になったもふもふが!!


「…もう、リザー。またしばらく立ち入り禁止にしないとダメなのかな?そんなだから小さな子達が貴方に近づいて来ないのよ?ほら、深呼吸して、落ち着いて」

 そのままじゃずっと触れないわよ?


「うっ、うん。スウー、ハアアアーーー。スウウウウーーー・ハアアー。うん。大丈夫、落ち着いて来たよ」


 大きく息を吸ってーーー。はい、吐いてー。はい、もう一度息を吸ってー。はい吐いてー。


 深呼吸、深呼吸とついラジオ体操を思い出して手をつけて大きく深呼吸をした。そのかいがあってか興奮が治まって来る。


「…うん。いいね、リザ。今の気持ちを忘れないでね。無理そうだったら即時退室だからね!」

「分かったわ。大丈夫。今日こそリンちゃんをなでなでするの!」

「…お手柔らかにね。本当に嫌われないようにね?」


 き・ら・わ・れ・る!!


「そ、そんなのイヤーっっ!だから頑張る。普通にしていて、嫌がらないようにそっと撫でる、ね。うん。ちゃんと出来るよ!」


 はいもう一度、吸ってー、はい吐いてー。

 よし、大丈夫。私はやれば出来るのよ!


「…ねえおねえちゃん、もういいよ。リザお姉ちゃんに悪気がないのは分かってるんだから、一回触れば多分落ち着くよね?だったら、はい。触っていいよ?」


 ずっと入口でララと二人でいたら、いつの間にかララの妹のリンちゃんがすぐ傍まで来ていて、呆れた顔をしていた。

 

「え、ええっ、い、いいの?リンちゃん」

「そうよ、いいのね?リン」


 リンちゃんにはララの家に寄る度に少しずつ近づいて行っていたから、やっと最近ではララの後ろに隠れずに少し距離はおいてだけど挨拶して、お姉ちゃんと呼んで貰って話すようにはなっていたのだけれど。

 それでも耳と尻尾へ視線を向けるとそそっと離れられていたのに。


「うん、いいよ。リザお姉ちゃんのことは、ちょっと変だとは思っているけど、ちゃんと好きだよ?だから、はい」


 すぐ目の前でリンちゃんが頭を差し出してくれたのに、そっと目線でララに許可を取ると、頷かれたのでゆっくりと膝をついて目線を合わせて、ゆっくりと頭に手を伸ばした。


 ちなみにリンちゃんはララと色違いではあるけれど、同じように大きなお耳が下がっている。

 そっとまず頭をなでで、嫌がる様子がないのを確認してから、ゆっくりと、そっと耳を撫でた。


 う、うわっっ。柔らかい!ふおおおおおおおーーーーっ!


 ふにゃんとした暖かくて柔らかくて、赤ちゃんの髪の毛のような柔らかい毛の感触に、思わずうっほー!と叫びそうな心を必死で心の中に押し込める。


「うわー…。凄い顔だわ、リザ。なんか引くわー…」

「…うん、すごいとろけた顔だね。まあ、でも、これくらいなら他の子も撫でさせてくれるかも」


 あああ、顔か!ああ、でも、無理だよー。どうしたってにやけるのは止められないよね。

 だって、ずっと夢見たもふもふが手の中に!なんだよ!


「はい、リザお姉ちゃん尻尾もいいよ。でも尻尾はそっと少しだけね。尻尾は触られるとなんかざわざわしちゃうから」

「うん、リンちゃん!ありがとう!」


 本当は『触られるとざわざわする』という幼い子の尻尾を触ったらダメだろうとは思う。

 そう、一応そうは思うのだ、けれども!!


 そう、さっきリンちゃんも言ってたように、一度撫でれたら落ち着くかもしれない!(そんな訳ない)


 そーっとそーっと。

 ちょっとだけ背徳感にひたりながら、後ろを向いたリンちゃんの尻尾に手を伸ばして、上から下へとゆっくりと撫でた。


「ひゃあう。ちょっとだけくすぐったい」

「あ、ご、ごめんね。…これなら大丈夫?」

「うん。それなら大丈夫だよ」


 表面だけ撫でるのがくすぐったいなら、と頭を撫でたように柔らかく撫でる。


 ちなみに。リンちゃんの尻尾は。


 もう、ふわっとして柔らかくて繊細な毛並みで、もう、もう、最高でした!!

 シルバーもなめらかな毛並みなんだけれど、やっぱり大きいから毛が太いのだ。だから全然違う手触りにうっとりと撫でる。


 あああああーっ。これはたまりませんのぅ。ほおおぅ。


 これがシルバーなら尻尾に抱き着いて存分に堪能出来るのに。

 と思ってしまったのは内緒のことなのだ。うん。


「はうあー…」

「うわー…。なんだろうね、リザのこれは。もうリザはこういう人種だと思った方がいいのかもしれないね」

「お姉ちゃん、うん、そうかも…。でも嫌な撫で方じゃあないから、他の子も大丈夫だと思うよ」


 声かけてくるね。ちょっと待っててね。


 そう言って奥の子供達のところへ行くリンちゃんの後ろ姿をうっとりとながめる。

 ああ、さっきとうとうあの尻尾に触れたんだよね…。


「リザ、はい深呼吸して。はい、落ち着いてねー」

「はっ!分かった!」


 大きく息を吸ってーーー。はい、吐いてー。はい、もう一度息を吸ってー。はい吐いてー。


 よし、落ち着いた!



 それからは。リンちゃんの後ろから恐々と近づいて来てくれた狐系の耳と尻尾のミリアちゃん、猫系の耳と尻尾のモーナちゃんの耳と尻尾を少しだけそっと撫でさせて貰って。


 それから様子を見て近づいて来ていた子供達を。耳尻尾ありもなしも遊びながら頭を撫でたり抱きしめたりしたのだった。


(柔らかくてビロードみたいだったりすっごく触り心地のいい筆のような毛並みだったりで大満足でした!)


 もう、大興奮の大満足の一日だった!!



 その日は興奮したまま家に帰ったらシルバーに拗ねられて妬かれてずっと寄り添って、寝る時も寄り添って寝たりした。


 勿論リザは嫉妬してかわええヤツ!と思う存分シルバーももふもふしたおしたのだった。



 ちなみに。保育園でのお世話係のお母さん達とご老人達は。

 リザの興奮してとろけて呆けた様をずーーっと生暖かい笑顔で見守ってたとさ。



 


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本編があと一話くらいで切りがいいのですが、どうしても書きたくて先に幕間書いちゃいました!

本編はもうちょっとお待ちくださいです。


*ちょっと宣伝(浮気してるのに)

スランプのリハビリに勢いで新作をアルファポリスの方に投稿してます。今のところはアルファポリスのみの予定です。

『もふもふと生産しながらスローライフ目指します!』(カナデで投稿してます)

男主人公でのりで書いてますが、良かったらそちらも覗いて読んでいただけたらとても嬉しいです!

ちょっと最初なので新作優先で書いてますが、こちらも週末には次を投稿します。よろしくお願いいたします。

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内政チートをやってみよう!まあぼっちですが… カナデ @usakiki2

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