あれ、元彼が武器商人になっていたんですけど

@misamisaz

第1話

私は混乱している。こんなところで元彼に会うなんて。しかも今まで付き合った中で一番イケメンの元彼だった。かの有名なアイドルと同じ名前ということもあり萌えていたし、その名前に劣らずイケメンであった。その名も、智久。みんなご存知、あのアイドルである。やっぱり名前に引っ張られる力ってあるのかもしれない。そんな元彼・智久が目の前にいる。東京・恵比寿横丁に。恵比寿という一見おしゃれエリアに突如現れる昭和にタイムスリップしたようなこの居酒屋に。恵比寿横丁の一番奥。そこは恵比寿横丁の中でも、ひときわ変なエナジーを放つ。それが前から気になっていたけど、そこに元彼・智久がいる。もう何年会っていなかっただろう。これまでFacebookで検索しても、Googleで検索しても、元彼は引っかからなかった。イケメンなのに、こんなに出てこないなんておかしい。そう思ってた。


元彼・智久は変わっていなかった。あのとき付き合っていたままだった。若かった私たち、メールでの連絡はいつもなんだか変態地味ていた。当時の私は処女だったし、そんな内容が恥ずかしくて、別れた。今はそんなことない。あのメールにもちゃんと言葉を返せるように、私も成長した。だけど、私のことなんて覚えていないよね…。そう思いながら、近くの席に友達と座った。たわいもないガールズトーク。おしゃれなカフェにすればよかったかな。そもそもなんでこんなことろを選んだんだ? うーん。考えても考えても今日はなんだかおかしい。飲んでいる焼酎梅ソーダ割りがとっても濃く感じる。あぁ、もう酔ってしまう。ちょっと酔ってきちゃったな。トイレに行くついでに夜風にあたるか。ほろ酔い気分で外にでた。

目の前には大きなボロボロの車が止まっていた。ボロボロといっても、古いといった感じではない。車に見えるけど、近代的なデザインで緑色。ロケハンに使う車を近代的デザインにして、それでいて泥や擦った跡や木の葉がついている。こんな大きくて近代的デザインなのに、どこを走って来たんだろう? そう思っていると、路地の遠くから2人のアジア人が歩いてくるのが見えた。近くにつれて早足で近づいてくる。思わずえっ?と目をひそめながら声を出してしまった。そのアジア人の手には大きな銃が。なになになに。どうなっているの!? 私が酔っているのかな。こんなの東京で見たことないよ。そう思っていると車の中から元彼・智久が出てきて、私の手を引いた。ガシャン!車の扉が閉まる音が聞こえると同時にアジア人の叫び声がする。その瞬間、絶叫マシンに乗ったときのような内臓が上にあがるような感じがした。超高速で移動している?? あたりが真っ暗で何も見えない。そう思った瞬間。元彼・智久が声をかけてきた。「-大丈夫?」 こんな声だったけ? ん…明かりがついて、目が上手く開かない…「うん、大丈夫だけど…」そう答えると、ドン!!! 車がしたに落ちた振動がした。ガタガタ「キャッ!!!」「-大丈夫。ついたよ」どこにどこに。そういって元彼・智久は車のドアを開けた。


どこどこどこ!? ん、そこには来たことがあるような気がした。香港? 臭豆腐の匂い。大きな中華鍋をふるっている路面店。漢字とネオンの看板、たまに聞こえる英語。恵比寿横丁に似た居酒屋なのかに向かい、元彼・智久は歩いて行く。えーーー。置いていかないでよ! そう思い、急いで私もついて行く。大きな中華鍋を振るう音、バイクの操縦音、人々の笑い声。「-危なかったな」「まさかな、あそこも落ちたか」元彼・智久は意味のわからない会話をしている。そこには、英語を話す人と中国語を話す人、日本語を話す人ダイバーシティーな空間だった。みんな泥をついた服や木の葉っぱがついている、どこから帰って来たんだ?あの乗って来た車と一緒だ。「それ、お前の女?」「そう」ー・・・!? 待て待て待て。なんて言った?「お前の女?」そして頷き? 意味わからない! 「ちょっと!」私は元彼・智久の肩を叩いた。「なに?」なにじゃないよね? 「そこ、座って」そう言われて、ここで騒いでも仕方がない…周りの雰囲気もあり、私は素直に座った。




「今回のミッションはこれだ。」そういって、スターウォーズに出てくる通信機械みたいなもので、チップから画像が3Dで浮かび上がってくる。私も見たことがあるような銃だ。「ワイアット・アープが所有していたとされるコルト・45口径・リボルバーだ。あの「OK牧場の決闘」で使われた銃だ。このくらい価値のあるものを取ってこれないと、お前も次はないな。前回の失敗はお前が思っているよりも痛手だ。しかも、この事件はリスクも大きい、行く人に少ないからこの価値のものがまだ残っているぜ。ラッキーだったな。このラッキーをものにできなかったら…わかっているな?」「賞金は?」「$250,000」「わかった。」そういって元彼・智久はその場を立った。私はその雰囲気に威圧されて何も言えなかった。私も後をついて行くしかなかった。そして車に戻ると、元彼・智久はがちゃがちゃと銃の弾や銃をいじりはじめた。「で、

どうするの?」思わず声をかけた。寂しそうで何かに追われているような顔を見て、何か話さずにはいられなかった。「どうって、あれを奪いにいくよ」そう私の目を見て言い返して来た、ドキッ。綺麗な顔立ちに思わずドキッとしてしまった。「あれを奪いに行くってどういうこと?」「俺はわかったと思うけど、時代に影響を与えた武器をその時代にいって現代に持ち帰って、売る。そういう武器商人をしているんだ。前回俺は武器をとってこれなった上に歴史上の人々に俺の存在を知られちまうところだった。それがやばいってこと。」「つまりー・・・。その時代に影響しないように、武器をとってきて売るっていうのが仕事なのね。結構命がけなんじゃ?」「そりゃそう。ってことだから、今すぐいくよ。これに着替えて。お前はここから出なくていいけど、一応。早くいかないと他のやつに先を越される。俺にも連絡がきたってことはすでに数人は先にいっている。急がないと。」そういってガチャガチャと車をいじりはじめた。私も急いで鉛が入って重い

緑色の装備に着替える。うっ、またこの感じ…絶叫マシンのぉおおおおおおおー・・・。ガタン!!!着いたようだ。

そこは1881年のアメリカ・アリゾナ州。映画でみたことがある、カウボーイたちが馬を連れて歩いてる。うぉおおお。すごい、これがタイムマシンってこと?そう思ったらドキドキしてきた。元彼・智久は装備を整えているようだった。「さてと、行きますか。」その衣装はまさにカウボーイの衣装だった。待って、かっこいいんですけど!!! いかんいかん、そんなこと思っていては…きゃー。「俺行くけど、お前はここから出るなよ? 一応これももっておけ、もし俺がやばくなったらこのボタンを押せば現代に戻れる。一回もどったら二度と同じところには戻れないと思えよ。俺がやばくなったら押せよな。そして、この銃も持っておけ」おわわわわ。銃なんて持ったことないし。これ、絵に描いたような赤いボタンだし。いろいろやばいよー。1人でこの車に残ってろ!? 待って怖すぎる… 「待って。私も一緒に行きたい!」一瞬怒った顔になった。「おい、聞いてたか? これは命がけで、この車は安全だから」「いやいや、この車怪しすぎて狙われるでしょ!安全なわけない!」そう言うと車のドアがあいた。「来い」をいって私に手を伸ばしている元彼・智久。えっとドキッとしながら私は手を取った。「えっ」外に出ると、そこには乾いた土。この広く乾いた土地に突然現れる町。聞こえる英語。そこには車から出たはずなのに車が見えない。そう外からはこの車は見えないようになっているのだ。「だから大丈夫。この時代の人たちに俺たちのことを知られてはならない。これが掟だ。あー。こういう時代は、俺アジア人だからやりずらいんだよ。」そうか。この時代この場所にアジア人がいるっていうのは、この時代に生きる人からしたらおかしなことなんだ。それをばれずに、あの銃だけを持って帰ってくる。プロだ。


ッッッドドドン! 突然、銃声が鳴り響く。「やばい!お前は早く戻れ!!!」私は急いで車の方に飛んだ。運良く車の中にはいることができた。元彼・智久の後ろ姿が小さくなる。ピピピピピー「不安ですか?」不穏な音の次に言葉が聞こえた。どこから聞こえるの? キョロキョロとあたりを見回してもなにもない。「ははは、ここですよ」音はどこから聞こえてくるのわからない。普通右から左から上から遠くからってわかるはずなのに…。操縦画面を見ると、そこにはドット絵で描かれたような目と口が浮かび上がっている。「大丈夫です。やばくなったら僕たちだけで帰りましょう」高い声でドット絵の口と声がシンクロしているけど、この画面から声が聞こえているようには思えない。動揺していると。「あ、そうです。私はあなたの脳に直接話しかけているのです。だからどこから聞こえてくるのか、わからないだけ。」どういうこと? 脳に直接話しかけている? 「僕が声を出すと誰かにバレてしまう可能性に繋がります。だから、音を出さないために、あなたの脳にはなしかけています」「そ、そうなんだ。」「智久が心配ですか? 心拍数があがっています」!? 心拍数? 「この車は自動治癒機能がついていて、あなたの健康状態や体重、血圧、心拍数くらいはわかるのです」!?? 「心配もしているし…」「そうですよね。どういうことかわからないですよね。」ドドドン ダダダダン ドドドン 銃声が騒がしくなる。叫び声も聞こえる。こわい。映画でもこわいの見れないのに…。「ここは大丈夫です。銃弾が飛んで来たら僕が避けれます」誰がと話せる。1人じゃないと思うだけで心強いと思った。「ありがとう。私は智久を待っていればいいのかな」「それしかできないですね。」「ちゃんと帰ってくるかな?」「たぶん今回はあなたもいるし、帰ってくると思います。いつもより、やる気を感じましたから。」そ、そうなんだ。激しくなる銃声。激しくなる叫び声。「ちょっと近づいてみましょうか。」え? そういうと車は銃撃戦の近くに近寄って行く。「智久から受信しました。」あっ!あそこに智久がいるのがわかる。バーカウンターからあの人の銃を狙っているのがよくわかった。危ない危なすぎる。思えわず、顔を手で覆ってしまった。見ていられなかった。そうすると、智久が銃を奪う姿があった。しかし、歴史を変えてはいけない。この時代に失う命は失わなくてはいけない。つまり、その銃から何発銃が放たれたあとに奪わなくてはいけない。そのタイミングを未測り、奪うのだ。一瞬のことだった。ーバン!!!! 智久を打ち抜いたように見えた。私はハッとする。ドキドキドキドキ。どうしようどうしようどうしよう。「大丈夫ですよ」車から暖かい声が聞こえる。その言葉通り、こっちに向かって走ってくる智久の姿が見えた。私は車の外に手を出した、そうすると車の位置が明確になったのか、こっちに向かって大きく飛んで来た。ガタン!!! 智久の身体が車にのる。「エヴァ、ここから出てくれ」「了解しました」はぁはぁと息が上がっている智久。その手には、あの銃があった。「はぁ〜。よかった。けどさ、見てくれよ。銃弾避けるのに、この銃で庇っちゃったよ。あーーーー、こりゃ減給だな。」ぎゅっ!!! 私は手を握った。「ん!? びっくりしたか?はははは」笑い事じゃない。もうとっても心配したんだから!「大丈夫、大丈夫。」そういって私の頭をぽんぽん。「エヴァ、あと何分で戻れる?」「240秒くらいです」そうか、というと装備を脱ぎ出した。おっとここで脱ぐ!? 無意識にうつむいてしまった。「なんだよ、みたいか裸?」は!?いいです。いいです。いいです! 首を横にふると。「変わってないな。」!? そう言われて、思わず智久を見る。ちゅ。突然のキス。



おわり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あれ、元彼が武器商人になっていたんですけど @misamisaz

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ