乗り合わせた列車で会ったのは、二人の少女だった。これから求婚しようというその彼に、彼女が語ったのは恐ろしいほどの愛だった。見て見ぬふり。気づかないふり。根底にある感情に蓋をした少女が犯した行動は、紛れもない愛。しかしその薄皮一枚を隔てた先にある恐ろしさは、簡単に言葉にはできない驚愕の行動だった。美しいものは、時に人を狂わせる。それは本人のみならず、周囲の人物さえも――――。
愛するものが愛せなくなったら-美しいと思っていたものが美しく思えなくなったら- 私たちは多くの場合まず外観から美しい醜いを決める。そして、美しいものを愛する。 だが、絶対だと思っているそれが崩れたら? あまりにもおぞましい。そして、そのおぞましさは、私たちにとってはお話しの中のものではない。 私はこの作者の作品の中では一番引き込まれた。 惜しむらくは終盤が説明過多な点だ。語りたいきもちを抑え、ギルダの顔という衝撃を言葉を絞って締めくくると、もっと劇的になるだろう。
愛とは何か? 語り手の少女・マルトにとってのそれは、どこまでもシンプルで、妥協のないものだった。ある出会いから、己の本性に気づいた彼女は……というお話。マルトの愛はルッキズムここに極まれりという感じでしたが、彼女にどこまでも己を捧げたアルテもまた、まことに愛があると言うよりも、一つの依存関係に陥っているのだろうなという印象で、なんとも心苦しいお話。その点では、少女の語りを聞かされた第三者「私」ととてもシンクロする思いでした。