その想いをいつかその日まで

@dymentars

第1話 狼の章



ときどき妙な感覚に襲われる。

初めはどうもなかったのに、最近頻繁に起きている。

「フェネック!」

ゾク…

あぁ…きた。この、気持ちいいとも、もどかしいともとれるこの感覚だ。

これはどうもアライさんに近づくとなるらしい。

「このままでいいのかなー…」

すーすーと眠るアライさんの寝顔を見ながら呟く。


太陽が真上にきた頃…

「アライさーん」

朝のじゃぱりまんを頬張るアライさんに話し掛ける。

「ふぁんあのあ?へねっふ?」

「噂で聞いたんだけどさー、ロッジにはねー一繋ぎの大秘宝があるんだってー」

「ひとつなぎのだいひほー?なんなのかわからないけど大冒険の匂いがするのだ!」

じゃぱりまんを飲み込み、目をキラキラさせてアライさんは叫んだ。

「さっそくいくのだぁぁぁぁ!!」

「はいよー」


ロッジにて

バタンッ!

「お宝はどこなのだぁぁ!」

「うゎっ、お、お宝?」

このロッジの管理人のアリツカゲラが驚いて聞く。

「そーなのだ!このロッジにだいひほーがあるのは知っているのだ!」

「えぇ…そんなもの見たことも聞いたこともないんですが…」

「ぐぬぬ…とぼけるならアライさんが探すのだぁぁぁ!」

ダダダダダッ

「あああ…ロッジの中は走らないでくださーい!」

バサッと飛び上がり、アリツカゲラはアライさんを追った。


「やっほー、オオカミさーん」

フェネックは、大人びた雰囲気で一部始終を眺めていたタイリクオオカミに話し掛けた。

「ん?あぁ、フェネックか。なんだい、アライさんの後を追わなくていいの?」

「んー実はねー、今日ここにきたのはオオカミさんに依頼があってー」

「私に?」

「実はー……」

 

「……なるほど、オーケーやってみるよ」

「さすがオオカミさーん、ありがとねー」

「この事はアライさんには?」

「もちろん言ってないよー」

「はは、そりゃそうだね」

「それよりー、まんが?とかのほうは大丈夫なのー?」

「ん?あぁ…この頃スランプでね、なかなかいいのが浮かばなくて」

溜め息混じりにオオカミが言った。

「作家さんも大変だねー、まぁよろしくねー」

「あぁ、任せなよ。ふふ、私は嘘はつかないからね」

「ほんとかなー…」

目を細めてフェネックは呟いた。

ダダダダダ…

「フェネックぅ!」

「んー?どうしたのさー、アライさん?」

「お宝ないのだー!どこにあるのだ?」

「あー実はねー…」

「ところでこんな話は知ってるかい?」

話に割り込み、タイリクオオカミが話し始めた。


「なんの話なのだ?」

「実はね、このロッジの床下にはセルリアンが隠れているんだ…」

「セ、セルリアンッ?!」

アライさんが声を上げた

「そう、普通の物音までなら気付かないけど騒いだり、走ったりして大きな音を立てると………」

「バクリッ!」

「ひぃぃぃぃ…」

「……」

怯えまくるアライさんと落ち着いた様子のフェネック。

「…そういえば今日はキリンがいないと思わないかい?」

「そ、そういえばそうなのだ…」

「キリンはね、今朝、私を探して騒ぎまくっていたんだ。無視しようかと考えていたら、フッ…と声や足音が消えたんだ…わかるかい?つまりキリンはセルリアンに…」

「うわぁぁぁ!怖いのだぁぁぁ!!」

(ゾクゾク…)

(まただ…)

「ふふ、いい表情いただきました。」

「ふぇ?」

「ふふっ、嘘だよ嘘。フェネックは気づいていたみたいだけどね」

「ふぇぇぇぇぇ!?」

「アライさーん気づこうよー、キリンならほら…」

ガチャ…

「ふぁ~…よく寝たわぁ、横になって寝たからかしら?」

黄色い体に茶色の斑点を散りばめた長いまつげのアミメキリンが部屋から出てきた。

「やぁキリン、珍しく名推理だね」

「ハッ!先生っ!すみません、いつもならもっと早く起きて先生の身の回りのことをしたというのに、私としたことが…」

「ずっと寝ていたほうが私のためなんだけどね…」

オオカミは苦笑しながら呟いた。

その時、フェネックはオオカミの束になった紙の中に、キリンの寝顔らしき絵があったのを見逃さなかった。

「そうなのだ!フェネック、お宝は結局どこにあるのだ?」

「あー実はねー、ほんとはここじゃなくてー図書館にあるらしーよー。オオカミさんが教えてくれたんだー」

「オオカミさんが?!」

「ふふっ、私は嘘をつかないよ」

「ぐぬぬ…怪しさまっくすなのだ…」

フェネックと同様に目を細めて疑うアライさん。


「じゃーアライさーん図書館にいこっかー」

「し、しょうがないのだ、図書館に向けてしゅっぱーつなのだー!」

「はーいよっとー」

「じゃぁー頼んだねー、オオカミさーん」

「なんだったんでしょうか?」

「さぁね。さて、仕事に戻るとしようか」

「先生っ!なにか手伝えることはっ?紙を…いえ、神を部屋へ運びますか?それとも名推理を聞かせましょうか?」

アミメキリンが一気にまくし立て、オオカミがつっこむ。

「紙をもっていかなくてもいいし、事件も起きてないのになにを推理するつもりだい?」

「ヴッ、そ、それは…」

「はい、いい表情いただき」

「もー先生~」

「ごめんごめん、つい綺麗だからね…」

「え?なんとおっしゃいました?」

「いや?別に?」

「ほんとですか?」

今度はアミメキリンが目を細めた。

「ふふっ、何度も言ってるけど私は嘘をつかないよ」

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