第29話 彷徨う死体

「暗い・・・・・・どこ?」

少年は彷徨いながら魔界の森を歩いていた。

「誰か・・・・・・」

少年は立ち止まり、座り込んでしまった。

「・・・・・・、僕ってなんだったっけ」

少年は自我自体が無くなりつつあった。

「お前はなんだ?」

通りかかった青年が少年を見つけ、剣を突きつける。

「何って・・・・・・何も・・・・・・」

「妙な奴だ、生きてるとも死んでるとも言えない、何か特殊な物も感じる」

青年は近くに居る龍の姿をした僕に話しかけた。

「放っておいても問題ないでしょうが・・・・・・気になりますか?」

「まぁな、娯楽に飢えているからな」

青年は少年のボロボロのローブの首元を掴み少年を引き寄せた。

「名前はなんだ?」

「・・・・・・思い出せません」

少年は萎縮しきって呟いた。

「ふん、そうか・・・・・・、なんだかお前を見てると誰かを思い出すな」

「どうされました?」

龍の僕は尋ねた。

「こいつの呼び方に困っていたところだ、どうする?」

「お好きになさればいいかと」

その反応を見て青年はつまらないっといった顔を見せ、少し考えた。

「お前はニーアだ、なんとなーく誰かさんに似てるからな」

「・・・・・・ニーア?」

少年は自分に与えられた名前を何度も呟いた。

「そうだ・・・・・・、楽しませてくれよな」

(やはり、まだあの少女の面影を追い求めているのか・・・・・・?すっかり甘さは消えたと想っていましたが)

龍の僕は少し首をひねりながら、青年についていった。

「あのっ、どこへいくんですか?」

ニーアは、少しよそよそしい感じで呟いた。

「・・・・・・、城だ、魔王城にな」

「魔王・・・・・・城?」

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