第28話 忘却
「・・・・・・?」
少年が見た世界はとても色鮮やかだった。
「ここどこ・・・・・・?何も思い出せない・・・・・・」
自分が何者なのかもわからず、彷徨っていく。
気付けば辺りは闇の気配を帯びていた。
骸骨や墓など、おどろおどろしい場所に変化していく。
「・・・・・・怖い」
引き返そうと歩く少年だったが方角も分からなくなっていた。
「珍しいね、気配がない人間ってのも」
骸骨が人の形を作り、墓に持たれて話しかける。
「喋れるんですか?」
「そうだね、数年前まで生きてたんだ、死んじゃったけどね」
自分が死んだ話をしているのにその骸骨はあまりにも嬉しそうだった。
「よかった、あまり怖くないですね」
少年は胸を撫で下ろし、骸骨の横に座った。
「どうしてそんな体に?」
骸骨が尋ねた。
「何も思い出せません、何か変わってますか?」
「人の姿をしていながら、君からは何も感じない、まるで死人みたいだ」
少年はその話を聞いて少し不思議に思ったが、特に考え続けようとは思わなかった。
「そうなんですか」
「ごめん、不快だったよね、知能を持った生き物と話すなんてなかなか稀なことなんでね、何せここは空虚な魔界の森だからね」
骸骨は機嫌を損ねまいと気にしているようだった。
「確かに、ここってなんだか静かですね」
少年は魔界の景色を楽しみ始めた。
「ちょっと頼みがあるんだけどさ」
骸骨は唐突に呟いた。
「体くれないかな?」
「なんで・・・・・」
少年は抗い続けるが骸骨の魂が入り込んでくる。
「ほしいからだよ」
骸骨の魂は体へと侵食していき、徐々に思考ができなくなってくる。
その時、少年の体は一瞬光る。
徐々に思考が解き放たれていく。
「この体・・・・・・どうなって」
骸骨の魂は悲鳴を挙げ始めた。
「拒絶されて・・・・・・このままじゃ・・・・・・消えちゃう」
骸骨の魂は焦り始めた。
弱々しい声で悲しみ始める。
「助けて、出れないよ・・・・・・、出れない・・・・・・」
「苦しいの?」
少年は骸骨の声を聞いてかわいそうに思った。
「体いらない・・・・・・いらないから助けて、このままじゃ存在が消えちゃう・・・・・・」
骸骨は懇願した。
死者すら恐怖する無の恐怖に。
少年は骸骨の魂という存在を心で受け入れる。
すると、徐々に骸骨の魂は身動きが取れるようになっていく。
「もうほとんど消えかかっちゃってるよ・・・・・」
骸骨は悲しい声で少年の中で呟いた。
「ごめんなさい・・・・・・、僕のせいだ」
少年はどうしていいのかわからなかった。
「こんなつもりじゃなかったけど、君の一部になるしかないや・・・・・・」
残念そうに骸骨は呟いた。
少年はその言葉を聞いて動揺した。
「頭がくらくらする・・・・・・」
少年の中で何かが変わった。
「そっか、一緒になったんだ」
少年は不思議そうに自分の体を見た。
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