第4話

 その話を聞いてから、ちょっとだけ樹先輩を見る目が変わった。

 とはいっても樹先輩がチャラチャラしてるのは相変わらずだし、私をからかってくるのも変わらなかったから、私も変わらないように接した。……つもり。

 内容が内容だから、琴にも話してない。

 琴から見て、私の態度は変じゃないだろうか。



 そうこうするうちに日は経って、吐く息が真っ白になる寒い日が続くようになった。


「あ、咲ちゃん。ちょうどよかった。今から連絡しようと思ってたのよ」


 サークルの部屋に行くと、あったかいストーブの前で千早先輩がスマホをひらひらさせながら声をかけてきた。


「なんですか?」

「サークルで毎年クリスマスパーティーをするんだけど、参加でいいよね? 勿論デートがあるなら、そっちを優先でいいんだけど」

「先輩。そんなの、ないのわかってて聞かないでくださいよ~」


 千早先輩の側の椅子に座ると、後ろでもその日の話をしているのが聞こえてきた。


「ねえ、樹は今年は誰を選ぶと思う?」

「当日になってみないとわからないよね。女の子はどの子も可愛いっていつも言うじゃない」

「そういえば、好きって言ってるの、聞いたことない。可愛いとか、綺麗とか誉め言葉は軽く口にしてるけど」

「誰にも言ったことないんじゃない?」


 好きだとか言って女の子を騙しているわけじゃないんだと聞いて、なんとなくほっとする。私には関係ないのに。



 だけど結局クリスマスパーティーには、樹先輩は来なかった。その三日前から風邪をひいて寝込んでしまったから。みんなが残念がっている中、私一人だけ心の中で喜んでいた。


「この頃、要先輩、要先輩って言わなくなったね」


 パーティーが終わる頃、琴に言われてはじめて気づいた。そういえばこの頃、要先輩より樹先輩のことばかり考えている気がする。

 女の人をとっかえひっかえするのは、やっぱり生理的に許せないけど。

 でも、いつも朗らかで優しく笑いかけてくれる先輩に、少しずつ惹かれ始めていたのかもしれない。

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