ファミネコヒーロー

 本業、学生。副業、ヒーロー。

 そんな俺の正体は、誰にも話していない秘密である。

 学生の僕にはできないことも、ヒーローの俺になら何だってできる。

 夢の中でも、過去でも、僕は弱い。助けられてばっかだった。

 強くなりたいと思えば思うほど、空回りして、それが悔しくて、でも、少しの勇気も出せなくて、大切なひとを失ってしまった。

 いじめっ子のバクラを許せないほど嫌いになったのは、あの冷たい雨の日。大切なひとを失ったのも同じ日だった。

 起きようとしても、さめない夢。何かにとらわれているみたいだった。俺はそこから抜け出し、あのひとから継いだすべてを使う。

 俺が、学生だろうとヒーローだろうと、やるべきことは変わらないから。

 打ち合う拳すべてに、それぞれの想いをこめて、俺は戦う。いくら怖くても、どれだけ傷を負おうとも、止まることは許されない。

 『星零花』。凍てつくほど寒い山の頂上に凛と咲き誇る花たちは、いつまでも輝いていた。俺はその力を借りて、全力で応戦する。

 どれだけピンチでも、まだ、ここで終わるわけにはいかない。やるべきことはまだたくさんあるから。

 いつもどこかから見守ってくれる俺の仲間の声援はいつも頼もしかった。そんな仲間たちが楽しく暮らせるのなら……。

 もらった大切なペンダントが割れたときに現れた一通の手紙。そこには、大切なひとからのメッセージが綴られていた。

 おかげで、また、頑張れる。

 たくさんの願いを背負って、俺はまた走り始める。

 本業、学生。副業、ヒーロー。そんな俺の長いようで短い夏休みの物語は、今、幕を下ろす。

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ファミネコヒーロー 紅音 @animuy_fti

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