「父親の再婚」という難しい出来事が、
小学生の男の子の目線で語られる物語です。
重くなりすぎることなく、
優しい言葉遣いや、丁寧な心情描写によって、
とても温かみのある雰囲気の作品となっております。
運動がヘタッピーだけどキャッチボールに付き合ってくれるお父さん。
野球の話をたくさん調べてお話しようとしてくれる新しいお母さん。
絵が上手い妹のユウナちゃん。
そして、主人公の祥太くんは、お父さんを悲しませまいと我慢してしまうけれど、本当は……。
この家族、みんな本当に優しくていい人たちなんです。
そしてこの作品の重要なポイント。
「玄関先の、小さな秘密」
それがどのような秘密なのか、皆様にも是非知っていただきたいです。
小学生の心に秘められた想いに、涙すること間違いなしです!
所々で小学生らしさを強烈に感じる文章で、素敵です。
それは、たとえばこだわってしまうところに出てきます。
小学生の頃は、一つのことにこだわってしまうことがありますよね。
物へのこだわりがあったり、こだわりがあるがゆえに奇行をしたり、
はたまた一つの言葉をこだわって使用したり。
(作品とは関係ないですが)私の場合は、好きな漫画やアニメを何度も繰り返し見て、セリフを暗記することがこだわりでした。好きなものへの愛情を、暗記することで表現しようとしていたのかもしれませんね。
この作品で登場するこだわりですが、
これが小説という形だからか、主人公の持つ言葉のこだわりが特に強く印象に残りました。
そこから主人公の少年の、大切なものをどれだけ大切にしているかという思いの強さや、必死な感じとか、いろんな気持ちが伝わってくるのです。
少年の心を覗くことができる!
そんな魅力的な作品です。
親が再婚する、という環境に立たされた少年の悩み方もリアルな感じで、
ただただ翻弄されるのではなく、
少年なりにあれこれと考えて、こうするべきだと思ったことをしていきます。
そんな健気な姿が見れるので、
読者は感情移入をしたり、応援する立場になったりして、どんどん読み進めていけます。
そして最後は晴れやかに終わって、気持ちがいい作品です。
『小学生だって真剣なんです』と身の引き締まるようなキャッチコピーのついた本作。親子のキャッチボールからの始まりは意外とのどか。しかし、父親の提案から早々と少年の日常が変化していきます。
少年に訪れたのは両親の再婚という一大イベント。しかも相手方は子連れです。突然の母親と妹。我が国においても再婚率は増加傾向にあり、こういった家族は増えていく一方です。そこで生まれる問題、継子と継親間はもちろん実親との間にも亀裂が入る可能性があり、再婚の試みは大きなリスクを孕んでいます。そして、大昔からありながらもこの手の苦しみに正解はありません。
そんなわけで、少年の心が翻弄されていくさまが本作では細やかに描写されており大きな見どころです。自分の心情がどう揺れ動くか人間にはままわからないものであり、それでも自分に理解を深め、他人を理解していかないといけないのです。彼は、主人公の祥太君は悩み間違えながらも、それを誠実に取り組める人間です。自分の居場所が無くなってしまったような焦燥感の中、父親や新たな母親、妹、そして去ってしまった母親、様々な関係性に少年はどうすればいいんでしょう。あなたも考えながら読んでみませんか?
難しいテーマに意欲的に取り組んだ一作です。本当にオススメです!