コーヒー牛乳が飲みたかった

紅蛇

ごくり。喉を流れて、星が溢れて——。

世界ってなんだろう。と考え出すと、頭のどこかが可笑しくなるのを感じる。

文章を書く手が止まる 世界が止まる すると、時間も止まるはずだった

それなのに、逆に世界とか、時間とかは止まらずに、私を置いてきぼりにしていった

置いてかないで 一人はやだよ 寂しい 淋しい 悲しい 愛おしい感情ばかり


世界ってなんだろう。と考え出すと、頭のどこかで隠れていた小人が姿を表す

今までどこにいたのよ。と聞こうとしたら、小人のことを忘れちゃう

彼は 彼女は どこへ消えたのだろうか それとも私がこの世界から消えたのだろうか

私のほうから、この世界を捨てちゃったのかしら わからない わからない わからない


コーヒー牛乳を飲む君は、私の昔と少し似ている 飲み方が同じなのかな わからないわ

世界と君は、私と君の共通点と同じだね コーヒー牛乳の雫がテーブルに落ちる音と一緒

私は別にコーヒー牛乳があってもなくても、生きられるけど 君はどうなの。

君はこの前、世界はコーヒー牛乳の存在を作ってくれたから、この世界は正義だと言った


君は私の為に生きている。と私は思い込もうとした 君は私がいるから生きれると言った

どっちもどっちで生きてしまっている 君がいるから 私がいるから 死ねないの

いっその事、一緒に心中したほうが幸せかな。と思ったけど、すぐに頭から消した

でもまた頭に百合の花が落ちる音がして、ハッと思い出してしまう あ、死のう。


この世界の他に、別の世界があったらどうする。君が私に聞いた 私は何て答えたか忘れた

世界は一人一人の存在と同じ数だけあるんだと、誰かが発言したのを思い出した

そんなに世界があったら、大変そうだと思ったけど まあそれでもいっかとも思った

私の世界と君の世界 同じだけど違う世界 多分どっちの世界にもコーヒー牛乳はあるはず


眠れない日は君の手を握って眠りたい。君にそう言ってみた でも君は首を横に振った

君の手は暑すぎるから駄目。君にそう言われちゃったから、諦めることにする 残念 断念

多分この世界が暑すぎるせいで、私の手を握るのが恥ずかしいんだ。そう思うことにする

この世界が冷蔵庫から取り出したばかりの、コーヒー牛乳の冷たさと同じだったらいいんだ


世界ってなんだろう。と考え出すと、そういうことは考えないほうがいいよと誰かが言った

多分その声は君だと思う 君の冷たい声と似ていたから 断念は出来ないけど、確信する

コーヒー牛乳の飲み終わった時の、残念そうな声と似ている 霊長類よりも爬虫類の声

君は人間じゃないと思う。私が君に言ったら じゃあ君は猿だ。と言われてしまった


この世界に生きている生物は人間だけじゃないと誰が決めたのだろうか。私が嘆いて笑った

多分、この世界の一番偉い人。君が一緒に笑ってくれた 多分そいつの名前は神様だろうね

この世界の一番偉い人 どうして人だと決めつける 人間の姿じゃないと駄目なのかしら

多分そいつは馬の姿をしているんだ そうして瞳は一つ ツノが生えてる 鱗が生えてる


私は間違えてこの世界を造った。神が言った。馬の姿をした神が私に言った 夢を見ていた

曖昧な頭で考えながら、なんの話かわからなくなった 世界 神様 そうして夢見る私

多分神様はコーヒー牛乳のことを考えていたら、間違えて私たちも作ってしまったんだ。

私は悩むことを放棄して、君に会いに行こうとする 君に言ってから考えればいいさ


神の姿は美しい競馬の馬のようだった 世間を見すぎてみることを放棄してしまった一つ目

流星群を作り出す一角よりも短いけど硬いツノ 気高い四本足には光に反射する鱗が生える

神の名前はミーシャであった 私の名前と一緒であった 君は私と神を見比べて泣いた

私と神と君とコーヒー牛乳とこの世界 私は考えることまで放棄してしまう さよなら


神の作り出した流星群に乗って、どこまでも旅に出てみたくなった ここから離れたい

それでも、離れてみたところで、この世界に変わりない 離れても 近くても 同じ世界

君と書こうとするたびに、神と書いてしまうのはなんの間違えだろうか。私は悲しむ

それを聞いた君も一緒になって悲しんで、結局一緒にまた泣いてしまったのは秘密


私は君と君の好きなコーヒー牛乳があれば幸せなんだ。君がそれを聞いて瞳を潤した

私はこの世界に生きる人の、一人なんだ そうして君も合わせると二人なんだ 神は知らん

それでもこの世界には私と君以外にも人類がいるのはなぜだろう。激怒してお湯を沸かす

怒るたんびにカップラーメンを作ったら、食べ飽きてしまうかもしれないね 太るかも


君は意外と感動しやすい性格だから、心配になっちゃう。私ではなく神が君に言った

ちょっとカップラーメンの小さいやつが作れる気がした イラっとして泣いた やめてよ

君はそれでも動じないで、私の沸かしたお湯で文字通りミニカップラーメンを作って食べた

私はそれを見てクスッと笑って、花を咲かせて見せた 君も笑顔になって、満腹にもなった


人類には感情という無駄なものがあるのはなぜだろう。違うこともたまに考えてみる

赤の他人と恋に落ちるためさ。頭のなかの小人ではなく、君が代わりに答えてくれた喜び

世界は愛に満ち溢れているというセリフを思い出した ヘドが出そうになったけど耐える

愛情 感情 好意 欲望 ◯◯◯ 願望 誰が作ってしまったのだろうか。一人で考える 


スマホを片手にツイッターを開く SNS上の小さな世界 大きな世界 一人の世界

これは人間が勝手に神の許可なしに作った世界 私はそれを知っているのはなぜだろうか

神が作った世界と、片手に収まるこの世界は何が違うのだろうか 同じなのかな

ネットと、本と、まな板の上の世界 ちょっとお腹が空いたからカップラーメンを食べる


私の個人のページを開く フォロワーはたったの一人 しかもこれは君、ただ一人

私が愚痴を溢す鍵アカ 君が慰める鍵アカ 私一人しか助からない 君はカウンセラー

世界は何のためにあるのだろうか。と考えると、頭のなかで小人がまた現れる 久しぶり

それは君たちのような人間に、そんな質問をさせるためにあるんだよ。初めて口をきく


頭のなかで考えている世界と、現実の世界と、君の思っている世界は同じだろうか 

知らないしどうでもいい 神が創ろうとしていた世界と、間違えて創った世界は同じなのか

思っていること 本当のこと 思いたくないこと 君のこと 世界って本当になんだろう

君はどう思っているのかね。神のミーシャが私に聞く それでも私は答えられないで沈黙


世界って本当になんだろうね。神が独り言のように、呟くのを私は聞こえなかったフリする

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

コーヒー牛乳が飲みたかった 紅蛇 @sleep_kurenaii

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る