03裏:為替の動き 3日目

 しばらく、部屋から1歩も出ない生活が続いた。

 やる気がまったく起きず、マンホールの蓋なんかを作る気分には、到底なれなかった。

 理由はわからない。いや、本当は考えるまでもないほどに、原因はわかりきっている。

 例の手紙だ。

 正直、これほどまであいつの存在が私の中で大きいものだったなんて、微塵も気づきやしなかった。

 それと同時に、後悔の念が沸き上がる。

 なんであんなにも冷たい態度をとってしまったんだろう。

 だが、今更どんなにあいつを想っても、もう二度とあいつに会うことはできないのだ。


 ま、まあまだあの手紙の中身が真実と決まった訳ではないのだけれど……。

 しかしながら、他ならぬもう一人の私からの手紙なのだ。恐らく……いや、間違いなく本当のことなのだろう。


**************


 そんなある日のことだった。

 私の工場に、一人の男が訪ねてきた。


 二度ノックをし、応接室への扉を開く。

「失礼します」

中にいたのは、見たこともない20代後半と思われる男だった。

「初めまして、お嬢さん。ボクは、相馬そうまっていいいます。今日はわざわざすいませんねぇ……」

そうさわやかな笑顔で挨拶をしてきた。

 相馬……?誰なんだ、一体。とりあえず、相馬に向かい合うようにして安物のソファーに腰かける。

「え、えっと今日はどういったご用件で……?」

正直、こんなとこに来る人間なんて、役所の人間か取引先の人間かの2択だ。良さげな服を纏っているし、明らかに怪しい。なにかの勧誘だろうか。

「あなたは、株、という人物をご存じですか?」

唐突に、相馬はそんなことを言った。

 なぜこいつが株のことを知っているのか。私は、驚きを隠しきれなかった。

「な、なぜそいつの名を……」

「フフフ……さて、話は変わりますが、彼の居場所を知りたいとは思いませんか?」

「えっ……!あ、あなた、あいつの居場所がわかるの!?」

「どうです?教えてほしいですか?」

「くっ……知りたい……けど、どうせただでは教えてくれないのでしょう?」

「ま、その通りなのですが」

そう言って怪しげに微笑む男。

 うさんくさいことこの上ないけれど、今ならまだあいつを助けることができるかもしれない。だけど、なんでこんなやつがそんなことを知って…………?

「条件はたったひとつです」

「……な、なによ」

男は、にこやかに告げる。


「あなたに、マンホールの蓋を作っていただきたいのです」


****************


 正直、拍子抜けした。

 もっと、大金をよこせ!とか、○○しろ!とかかと思ってたのに……。

 なにはともあれ、私は彼の出した条件を二つ返事で承諾したのだった。


****************


~side 相馬~


 気づいてる人もいるかとは思うが、一応言っておく。

 ボクの名はソーバ、亜空間を統べる者。

 基本的に、ボクはこの物質世界――現実世界に干渉することができない。そもそも、こっちの世界に来ることができない。

 ただ、その往き来を自由に可能とする力が、たまたま生まれた。


 亜空間で稀に産み出される精神生命体というものは、必ずなにかしらの能力を持ってこちらがわへと帰ってくる。しかしその能力は、あくまでも物質世界にのみ効果があるものだ。そのはずだった。

 偶然ーー本当にたまたま、亜空間にまで干渉できる能力が産み出された。それこそが、この女を宿主とする精神生命体が持つチカラだった。

 勿論、ボクがここに来たのは、その能力を奪うことが目的なのだ。


 なぜボクはこちらがわへと来れたのか。

 それは、奇跡と言っても過言ではない偶然の産物によるものだったのだよ。



 少し前のことだ。亜空間に、ある男が落ちてきた。文字通り、物質世界から落ちてきた、のだ。

 彼も例外なく精神生命体となり、他と違うことなく能力を手に入れた。

 問題は、その能力の内容だった。

 この女を宿主とする精神生命体が持つ能力と正反対の力……すなわち、亜空間からもとの物質世界へと干渉する能力だった。

 驚いたよ、ほんとに。まさか長年待ちわびていた能力がついに発現するなんてさ……。ボクは、神の権限で、彼の能力を簒奪した。――まあ、それがボクの能力でもあるんだけれど。

 彼は、亜空間から出たゴミが向かう場所……俗に言う異世界へと飛ばされた。なんの能力も持たない精神生命体が、元の世界へと帰れるはずもないのにね……。


 と、いうわけだ。長くなってしまったね。

 さて、それではいよいよご対面だ。


***************





to be continue........?

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為替と株の値動き みぃの人 @04tsuki04tsuki

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