エピローグ
だんだんと、赤くなっていく部屋の中。2人の男女の声が響く。
「先生。彼らは2人とも亡くなりました。先生の判断は正しかったのですか?」涙の混じった女の声。
男は答える。「彼らにとって、本当に良かったのかは分からない。だが、俺は正しいと信じている」男は続けた。
「この世に2人だけの患者。“人を好きになったら死ぬ”いや、正確には“人に好きと伝えると死ぬ”病気。始めは強力な感染症と間違えたがな……。そんな病気が、世の中に広まったら、世界は大混乱だ。その菌はあの部屋に留めておかなければいけない。だが彼らはどうなる? 部屋に閉じ込められ、これからの長い人生を孤独に生き、人形の様に死ぬのと、最後に人間らしく恋をして死ぬのと、どちらが良かったと思う?」
「……。」男の問に、女は答えられなかった。「だが、これは俺の勝手な意見であることには変わりない」
「ところで、お前、好きな人はいるか?」男は静かに言った。「な、何を言っているんですか、急に。」女は慌てて言った。「いますよ、私にだって好きな人くらい……」
「そうか、だがお前がその想いを相手に伝えたら、お前の命はそこで終わる。お前なら最後に何を思う?」女は少し考えてから言った。「……最後にこの人を好きになれて良かった、ですかね」男は言う。「あぁ、俺もそう思うだろう」
「……。」
「……。」
部屋に沈黙が続く。その沈黙に耐えかねたように、男は立ち上がった。
「先生? どこに行くんですか?」女が聞く。「花屋だ。花を買いに行く」男は答えながら、身支度を整える。
「私も行きます!」そう言って、女も身支度を整える。その間に、女はなんでもない事のように、まるで答えを求めていない独り言の様に言った。「先生の判断は正しかったですよ、きっと」
「あぁ……、ありがとう」男は答えた。その声には少し涙が滲んでいた。「行くか……」男の言葉に女は答える。「はい」
2人が出て行った部屋は夕焼けの赤い光で明るく輝いていた。
15cmの僕と君の7日間 青空リク @yumeumi
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