第2話 迷子の少女

俺とフゥは実際のところ、幼なじみよりも深い仲だ。

俺は数年前に家族を亡くして、フゥもフゥで身寄りがなかった。

だから今となっては2人暮らしのようなものだ。

俺らが別の時間に投稿するのは学年が違うからだ。

高等部2年の俺に対して、フゥは中等部3年。

2つしか変わらないが、俺は3月生まれに対してフゥは5月生まれらしい。

だから実際の差は2つもない。

……そういえば、正確な誕生日を聞いたことないな。


×××


今回は部員を紹介しよう。

人数は俺とフゥを含め、6人。

まあ、1人に関しては多忙でほぼ幽霊部員だ。

フゥは風属性の成績上位者。

そして、高等部1年カチュル・バーステル。

バーステル家っていう所のご令嬢らしい、金髪のよく似合うお嬢様。

雷属性の成績上位者に当たる。

それと高等部3年シガット・モルガン先輩。

黒いストレートロングの髪型は清楚さが引き立つ。

水属性の成績上位者だ。

次に高等部1年ゴードン・マンドルグ。

中世の騎士のような装備を常にしているため素顔を知らない。

土属性の成績上位者で、魔皇候補らしい。

そして最後に、高等部2年グレン・マッスド。

俺の同級生、同じクラスだ。

まあ、俺は教室に行かないから会ったことないが。

だからどんな奴かもわからない、わかってる事は一つだけ。

炎属性の成績上位者……いいや、魔皇だって事だ。

属性の魔皇は1人じゃないが、それでもその1人が学園にいるってだけでも驚きだ。

……?俺も魔皇じゃないか、って?

喧嘩売ってんのか?

この部活はバーステル家のご令嬢さんの雇う専門の人らが、コンピューターで魔女を探索。

そして、掃除やら街散策は毎日順番になっている。

ちなみにグレンの時はじゃんけんだ。

今日はシガット先輩が掃除、俺が街散策だ。

明日はフゥが掃除で、グレンが街散策か……じゃんけん……。

俺はじゃんけんは弱い方だ。

「じゃあ、俺は街散策行ってきます。」

「カルデ!いってら!」

「おう。」

嗚呼、なんで今日に限って俺だったんだろう。

なんて文句はこの時は考えもしてなかっただろうな。


×××


街散策って言ってもそんなに大きい街じゃないし、異変なんて滅多にない。

ようするにただの散歩だ。

とりあえず、自販機へと脚を運ぶ。

犬の散歩中の男性が先に使っていた。

ふと、買ったものが目に入る。

コレ・コーラか……。

俺もちょうど飲もうと思ってたんだ、気が合いそうだな。

なんて冗談を頭で言いながら、自販機にお金を入れコレ・コーラのボタンを押そうとした時だ。

『売り切れ』の表示。

前言撤回、あの人とは仲良くなれそうにない。

俺は結構小さいやつでもある。

しょうがない、五矢サイダーで我慢しよう。


×××


俺が今利用した自販機は公園内に設置されたもので。

この辺の公園がここだけという事もあって使用率はなかなかだ。

遊具がなく、ベンチが何個があるだけだ。

それでも四季折々の景色が楽しめるから、子供はいなくても大人は結構いる。

それにしてもついてねぇな。

あと数分早く来ていればコレ・コーラが飲めたのに……。

めんどくさがって出るのに少し遅れた俺を恨みたいぜ。

そんなにコレ・コーラが飲みたかったんだよ。

「……はあ。」

俺はとりあえず、ため息を吐いた。


×××


俺はこの散策をしている時に毎回思う事があるんだ。

この散策に意味はあるのか、と。

それは別に魔女が現れないから、とかではなく現れていたとしてもだ。

学園内で優秀でも、万が一鉢合わせた時にどうにかなる相手だとは、到底思えない。

文明を終わらせちまうような魔法使いなんだろ?

俺なんか特にどうにも出来ずに殺られそうなんだが。

そうそう、その文明を終わらせた魔女ってのは『闇の魔女』って呼ばれてる。

まあ、文明を崩壊させたってだけでも闇ってのは相応しいが。

その崩壊させ方が一説では、まるで闇に包まれるようだったらしい。

文明崩壊後に見つかった何かのノートにそのような描写があった事でこれが有力説になっている。

『────奴が現れて一日目、空は闇に包まれ、太陽の光が届かない。だが、暖かさは伝わる。どうやら外と遮断されたわけではないようだ。』

『────三日目……この雲は魔力を吸っているのだ。それにどんどん低くなっている。触れた建物が灰に……。ああ、神よ。』

『このノートを埋め、生まれるかもしれぬ後世の役に立たせよう。』

というものだ。

今じゃ教科書にもこの文章は載るくらい、この文献は重要視されている。

さてさて、魔女何かと会って死にたくないし、この辺でササッと帰るか。

「……あれは。迷子か?」

時間は18時27分。

この時間にこんな所を1人で歩いている女の子。

間違いなく迷子だろうな。

はあ、これだけ片付けてくか。

不運な事故にでもあって次の日ニュースにでもなってたら目覚め悪いしな。


「なあ、君。迷子か?」


少女は首を縦に振った。

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無の魔皇と戒めの魔女 Carmilla @Carmilla1358

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