世界が十五センチズレたので

作者 空伏空人

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★★★ Excellent!!!

冷やかしで覗いた本山らのの朗読会で、たまたま出会った作品。

最初は興味なんて全然なかったんだけど、朗読を聞いてるうちに、らのの柔らかな語り口に誘われ、巧みな声の使い分けに引きこまれ、情景が次々と頭に浮かんできて、もう戻れなくなってしまったわ。

この世界に生きるぶっきらぼうの「僕」と、平行世界に生きるからかい上手の「僕っ娘な僕」が、手首から中指までの長さよりも短い、わずか一五センチの空間を通じて行うコミュニケーション。

こんなラブコメも、悪くないわね。


★★★ Excellent!!!

のぞきはドキドキする。ましてや、SF的なギミックと組み合わされたときなんて、そりゃ…………。

のぞき穴は小さい。かの『沈黙の春』の中でレイチェル・カーソンが引いたジョージ・ウォールドの言葉を持ち出すまでもなく、小さなのぞき穴でも、近くに寄ればそこから広い世界が見える。

15センチしかないのぞき穴から向こうを覗き込めば、隣り合う世界が見える。隣り合う世界との危うい関係が、僕らを止まらないワクワクへと誘うのである…………。

★★★ Excellent!!!

興味深いSF設定であるのに、それを全面に押し出すことなく、もうひとりの自分という、誰しも一度は会ってみたい人間との関係を丁寧に、そして小気味よく書いてあるのは、読んでいて楽しかった。
最後のほうは泣きかけた。
そしてラスト、また新しい広がりを見せつつ終了する。

愉快だけど、少し切なく、愛らしい物語。好きです!