冷やかしで覗いた本山らのの朗読会で、たまたま出会った作品。最初は興味なんて全然なかったんだけど、朗読を聞いてるうちに、らのの柔らかな語り口に誘われ、巧みな声の使い分けに引きこまれ、情景が次々と頭に浮かんできて、もう戻れなくなってしまったわ。この世界に生きるぶっきらぼうの「僕」と、平行世界に生きるからかい上手の「僕っ娘な僕」が、手首から中指までの長さよりも短い、わずか一五センチの空間を通じて行うコミュニケーション。こんなラブコメも、悪くないわね。
ほんの少しだけ世界がズレて、別の可能性を持った隣の世界の僕と出会ってしまったら。15センチという言葉からこの発想、そしてこの展開になるのが素晴らしい。読みやすく、でもしっかりSFしていて、男女とほんの少しの恋愛要素が散りばめられている。オチもよかった。
もうこの発想、思いついた時点で勝ち確定だと思うんですけど、僕とキミのキャラの落差、キミに振り回される僕、その会話の軽妙さ!!大絶賛! 以外になんと褒め称えればいいでしょう?
物語には色々ありますが、中には基本設定を思いついただけで勝っているな、という作品がままあります。 そして、多分これがそれ。いやぁ、この発想はいいなぁ、それかぁって思いました。やられた。 短編だから良いのか、広げたら広げた良さが出るのかは分かりませんが、もっと色んな話を見たいと思いました。
のぞきはドキドキする。ましてや、SF的なギミックと組み合わされたときなんて、そりゃ…………。のぞき穴は小さい。かの『沈黙の春』の中でレイチェル・カーソンが引いたジョージ・ウォールドの言葉を持ち出すまでもなく、小さなのぞき穴でも、近くに寄ればそこから広い世界が見える。15センチしかないのぞき穴から向こうを覗き込めば、隣り合う世界が見える。隣り合う世界との危うい関係が、僕らを止まらないワクワクへと誘うのである…………。
だけどだけど…。私もこんな、パラレルワールドの自分が欲しい!