【栗の花】

 ――『栗咲くや微睡む猫の髭揺らす』


 季語は「栗咲く」で、「栗の花」の子季語である。

 六月くらいから白い花穂を垂らし、独特の匂いを放つ栗の花は、好き嫌いが分かれるところだろう。愛宕は嫌いでもなければ好きでもない。匂いを感知すれば「あぁ、栗の花が咲く時期か」と、匂いを放つ辺りを見回すくらいか。


 日陰で猫が微睡んでいた。

 まだ暑い時期ではなかったが、風通しの良い日陰でゴロリと横になるには最適のコンディションだったのだろう。見ているだけでこちらまで気持ちの良さが伝わってくる。

 そこへ栗の花の匂いが風に乗って漂ってきた。風の心地良さが猫の髭を動かしたのか、栗の花の匂いが髭を刺激したのか。答えは猫にしか分からない。愛宕が猫だったら、確実に栗の花の匂いが原因だけれども。


 とても地味で静かなシーンだが、栗の花のおかげで程良いアクセントが生まれたのかもしれない。敏感な猫の髭がピクリと動けば、四本足のどれかも小刻みに震えるところも可愛らしい。


 一つ前の「蝶」の句もそうだが、のんびりと何かをじっくりと見る時間が欲しいと思ったりするこの頃でもある。

(やっとスクーリングが終わったー! でも明日から仕事じゃーん!)

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俳句倉庫 愛宕平九郎 @hannbee_chan

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