少し未来の話


 ママがお仕事で出かけちゃうの。

 大おじいちゃん、大おばあちゃんがね、「地元の神社がなぁ、社務所を建て替えてから、良くない事が起こっているんじゃぁ。尚美さん、悪いが何とかしてくれんかなぁ」って、ママにお願いしてきたの。

 それで、ママは一人で出掛けちゃうの。

 静も行きたいってお願いしたけど、「幼稚園あるからダーメ!」って、静のお鼻を笑いながらツンツンしたの。

 じゃ、パパは行かないの?

「パパは静ちゃんとお留守番よ」

 静、パパをグルンとなって見たの。

 パパは新聞を読みながら「米と野菜持って来いよ。それくらいの使いはできるだろ」って、とっても偉そうに言ったの。

 そしたらママがゴーン!てパンチして、パパは「ぐわあああ!」ってなってお鼻から沢山沢山血を出しちゃったの。

 痛い?痛いねパパ?大丈夫?

 静、パパのお鼻をなでなで~って。

 痛いの痛いの飛んでけ~ってやったの。

 パパは「慣れているから問題無い。寧ろどんと来い」って静の頭をグシャグシャーって撫でてくれたの。

 静、それ聞いて安心しちゃった!

 毎日フッシャーって鼻血出しても、やっぱり心配だからね!

 そして、ママはせかせかせかせか準備して「静ちゃん、お土産楽しみに待っててね」って、静をぎゅーっと抱き締めてくれたの。

 ママは優しいから好きー!

 大好きー!

 静も良い子にして待ってるって言って、ぎゅーって抱き付いたの。

 ママはポンポンと静の頭を軽く叩いて、赤い車に乗ってビューン!って行っちゃった。ママ行っちゃったから、静良い子にして待ってるの。

 悪い子にしたら、ママ悲しくて泣いちゃうから駄目なの。

 だから、ちゃんといつもの静のお仕事するの。

「タマー。おいでー」

 静が呼ぶと、ちっちゃい狐さんがタッタッと走って来るの。

「タマ、お散歩ー」

 紐をニューって見せると、タマは喜びながら紐を首輪につけてーってはしゃぐの。

 もぅ!そんなにはしゃぐと、上手に付けられないよー!

 ぶーってなりながら、一生懸命紐を付けるの。

 静、頑張って紐を付けたよ!

 タマは早く早くーってグイグイ紐引っ張るの。

 タマは軽いから静でもメッ!て、できるんだよー。

 でもタマはね、本当はおっきいおっきい狐さんなの。

 おっきい狐さんに変身すれば、静なんて簡単に引き摺られるんだよー。

 でもタマはおっきい狐さんにあんまり変身しないの。

 何だか、パパとお約束したんだって。

 お約束をちゃんと守るタマって偉いよね!クシシシシ!

 お家の裏に、お散歩できるお山があるの。

 そのお山をぐるーってタマと一緒に歩くの。

 お池のお魚さん見たり、おミカン取ったりしながら歩くの。

 ぐるーって歩いたら、最後に真ん中の椅子のある広場に行くの。

 そこで静はお座りして、疲れたー!ってするの。

 そしたら、そしたらね、12人の神様が、静、良く来たねーって、ぶあ~って集まってくるの。

 お池の神様のりゅうちゃんとか、おミカンや桃くれる鳥みたいな神様のふーちゃんとか、静を乗っけて、がおーっ!てやってくれる虎さんの神様のしろちゃんとか、全部で12人もいるんだよー。

 なんか『北嶋の12柱』って言うんだって。

 みんなちゃんとしたお名前があるんだけど、静難しくて解んなくなっちゃうから、神様達が、静の呼びやすいのでいいよーって言ったの。

 だからりゅうちゃんとか、ふーちゃんとか、しろちゃんでいいの。

 みんなとっても強いんだよー!

 静が、このお墓の前怖いなーとか、この踏切から黒いのぶあ~って出るなーとか怖がってると、みんながバーッて出て来てボーンって黒いの無くしてくれるんだよ!

 だから静、みんなの事大好きで、お友達にも見せたいんだけど、普通の人間には見えないんだって。何か可哀想だよねー。

 だけど静がちゃんとみんなを良い子良い子してあげるから大丈夫だよ!静が見えたらいいんだもんね!

 椅子の前におっきいテーブルがあるの。静は貰ったおミカンとか、そこで食べるんだよー。

 喉乾いたから、おミカン食べよーっと。

「ニャーン…ニャーン…」

 あれ?あれれ?テーブルに黒い猫さんが乗ってるよ?

 だけど静はちゃんと知ってるもーん!

 脅かそうってしてもメッ!だからね、クロちゃん!

 クロちゃんはニコーって笑いながら静を見るの。

 クロちゃんは遠い所にいる、大おじいちゃんと大おばあちゃんのお家の猫さんなんだよ!

 たまに静に会いに来るんだよー。

 クロちゃん良く来たねー。なでなで。

 クロちゃんはニコーってなってニャーンって鳴くの。

 大おばあちゃんに電話して「クロちゃん遊びに来たよー!」って言った事があったの。

 大おばあちゃんは笑いながら『そりゃ別の猫じゃよ』って言って信じてくれないの。

 ぶー!おばあちゃんのお家のクロちゃんなのにね!

 だって、だってね!

 普通の猫さんはニャーニャー鳴くけど、クロちゃんは「静ー遊びに来ましたよー」「静ーご機嫌どうですかー?」って喋るんだもん!

 だからこの猫さんはクロちゃんなのに!

 解らず屋なんだよ、大おばあちゃんは!ぶーっだ!

 クロちゃんとねー。

 初めて会ったのはねー。

 去年の夏休みだったかなぁ?

 大おじいちゃん、大おばあちゃんのお家に遊びに行った時なの。

 大おじいちゃんは、「静ー、会いたかったわ!」ってギューッて抱っこしてくれたの。

 大おばあちゃんは何か静見て拝んで「いつお迎えが来ても悔いは無いわぃ」って言ってたの。

 静が遊びに来たのに、どっか出掛けちゃうの?って聞いたら笑っちゃったの。

 変なの?

 その時ね、クロちゃんが静の足でニャーニャー鳴いていたの。

 そんでね、

「静、また会えましたね」

 って言ったの。

 静はね、初めて会ったのに、すごく懐かしく思ってね!

「ただいまっ!!」

 て、言ってクロちゃんをギューッてしたの!

 クロちゃん嬉しそうにゴロゴロ言ったの!

 静も嬉しくてギューッ、ギューッてしたらギャッて言って離れちゃった。

 ちょっと苦しかったのかな?

 ごめんねクロちゃん。

 静もたまにパパにギューッギューッされて苦しくなるの忘れちゃってた!クシシシシシ!

 そのあと、パパのお友達がいっぱい来たの。

 お肉屋のおじちゃんとか、お魚屋のおじちゃんとか、子供連れていっぱい来たの。

 お庭でね、ばーべきゅー?だっけ?お肉とかお野菜をジュージューして食べるやつ。

 お肉屋のおじちゃんが静にお肉ドバーって盛ってね。

「静ちゃん、あの時は何もできなかった。ごめん」って泣いちゃって。

 お魚屋のおじちゃんも、「静ちゃん、俺があの時逃がしたりしなきゃ…」って泣いちゃって。

 おばちゃん二人は静をギューッてしてわんわん泣いちゃって。

 なんでみんな静に謝るのか、何でみんな泣いちゃうのか解らなかったから、ママに聞いたの。

 ママはね、

「静ちゃんはみんなを助ける為に生まれてきたのよ」

 って言って、優しい優しいお顔で、静の頭をポンポンしたの。

 助けるって何だろ?

 解らないけど、みんな、ごめんねごめんねって謝るから、静大丈夫だったよ?って言ったの。

 本当に大丈夫だったんだから!

 悲しかったり、痛かったり、苦しかったりしたけど大丈夫だったんだもん!

 あれ?あれれ?

 何で悲しいかったり、痛かったり、苦しかったりしたのかな?

 何で大丈夫って思ったのかな?

 静も、んんん~?ってしてたら、お医者さんのおじちゃんが静を見るなりバーッと走って来たの。

 お医者さんのおじちゃんは、静を二人のおばちゃんからブーンってやって静をギューッてしてね。

「ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん静!」って、誰よりもいっぱい泣いちゃったの。

 パパ~どうしょう?って困ってパパを見たら「泣かせとけ」って言ってお肉をモリモリ食べてたの。

 お医者さんのおじちゃんが、「許してくれ、許してくれ!!」ってわんわんわんわん泣いちゃって。

 静、困ってお医者さんのおじちゃんの頭をポンポンしてね。


「兄ちゃん、私恨んでないよ。」


 って、何かポーンってなって言っちゃったの。


 お医者さんのおじちゃんは、ありがとう、ありがとうって、いっぱいいっぱい泣いちゃってね。

 パパのお友達のおじちゃん達も、良かったな流、って、わんわん泣いちゃったの。

 その時ね。

 あー。帰ってきて良かったなー。

 って、初めて来たのに、そう思ったの。

 だからおじちゃん達にね、ニッコリ笑ってね、

「ただいまみんな!!」

 って、言っちゃった!

 何でそう言ったか解らんないけど、おじちゃん達、それ聞いて、みんなご近所に聞こえるくらい、わーっ!!って泣いちゃった!!

 パパとママはニコニコしながらそれ見ててね、パパが「静、よく言った!流石俺の娘だ!!」って、静のほっぺにほっぺ付けて、グリグリ~ってしたの。

 パパに誉められて、静嬉しくてね、クシシシってなっちゃった!

 あの時は楽しかったなぁ。

 沢山のおじちゃんおばちゃんが静の取り合いしたんだよ。

 抱っこさせてーって!

 静はパパとママが一番だから、ごめんねってパパから離れなかったけどね。クシシシ!

 ん?クロちゃんもう帰っちゃうの?

 クロちゃんニッコリして「また遊びに来ますからね、静」って、言ってピョンてテーブルから飛び跳ねて帰っちゃった。

 タマも紐をグイグイ引っ張りだしたよ?帰りたいのかな?

 神様達も、みんなブアーッて居なくなっちゃった?

「静ー、幼稚園のバス来る時間だぞ。そろそろ戻るぞ」

 話しかけられて、グルンてしたら、パパがニコニコしながら静を見てたよ!

「パパー!みんな居なくなっちゃったよ!」

「だから、静の幼稚園の時間だから、みんな帰ったんだよ。ほら、行くぞ」

 パパは静をうんしょって肩車してくれたよ。

 こうすれば早く戻れるだろ、って言ってね!

 パパの肩車、高い高いで面白いの!

 しろちゃんのより低いけど、しろちゃんのより面白いの!

「パパ!パパ好き!面白くて大好き!」

 パパの頭をギューッてして言ったの。

「そうかそうか。尚美が帰ったら、ママよりパパが好きと言え」

「えー?ママも優しいから大好きなんだもん!どっちも同じくらい大好きなんだもーん!ぶー!」

 静が困っているのに、パパはゲラゲラ笑っているの。

 ダメなパパだよね。

 だけど、静の大好きなパパなんだよ!

 静が生まれてくる前から、ずーっと大好きなんだからねっ!!

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北嶋勇の心霊事件簿11~哀しき少女~ しをおう @swoow

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