戻った日常

 あれから二日後。

 私達は住み慣れた北嶋さんの家に帰ってきた。

 二日間、皆さんやお爺ちゃん、お婆ちゃんと派手に騒いで、仕事より疲れていたりする私。

 あの後、滝沢さんも、打ち上げみたいな飲み会に参加し、皆さんと仲直りした。

 滝沢さんはふとした切っ掛けで静さんを思い出してよく泣いて、それを向井さんが慰めて、を繰り返していた。

 滝沢さんの復帰は、向井さんに掛かっているのは、あの飲み会で充分理解できる。

 そんな向井さんに、皆さんも協力する、と誓った。

 北嶋さんは良い友人に恵まれたと、本当に思う。

 私達が帰る時、お爺ちゃん、お婆ちゃんは寂しそうだったが、また遊びに来ます。と言ったら少し安心して笑って送ってくれた。

 北嶋さんは結局、最後の最後まで、万界の鏡を使わなかった。

 黒猫様が、話しがしたい。と言っていたから私が代弁したが駄目だった。

――勇は昔から頑固でしたからなぁ…

 呆れながらも変わっていない北嶋さんに安心もしていた。

 さて、正式に婚約した私達だが、北嶋さんとお風呂に入ったり、一緒に寝たりはまだしていない。

 だって…

 だって凄く目がエッチで怖いから!!

「お前、蛇の生殺しだろ!!」

 そう、蹲って嘆く北嶋さんだが、そのエッチな目をやめたら、私も安心できるのになぁ。とか思ったり。

「実家で添い寝したじゃん!!」

 一応既成事実を出した私だが、北嶋さんが納得する訳でも無く、嘆くのをやめない。

 まぁ、可哀想過ぎるが、私の心の準備が整うまで、もうチョッッットだけ待って!!

 いずれ私から誘うからね?ね?ねね?

 これに関しては、私が悪い。

 ごめんなさい北嶋さん。

 チョットだけ、ほんのチョッッッッットだけの辛抱だから!!

 罪悪感を振り切る為、御神体のお掃除をする。

 私の罪悪感を見抜いた守護柱達は、ただニヤニヤと私を見ている。

「いずれお風呂にも入りますし、一緒に寝たりしますから…」

 弁解するも、ただニヤニヤして返す御柱様達。

 もの凄い罪悪感を覚えながら、お掃除に精を出す。

「終わった…汗…ビッショリだけど…」

 お風呂に向かう。

 頑張って北嶋さんを呼んでみる。

「北嶋さーん……ちょっと来てぇ……」

 北嶋さんが不機嫌な顔でやって来る。

「なんだ神崎?」

「あの、あのね、あの……」

 かなぁり頑張っているんだけど、どうしても言葉が出て来ない。

 苛立った北嶋さんが再び聞き直す。

「だから何の用だ?」

 恥ずかしさ全開になり、思わず拳を鼻に叩き付けた。

「ぐわあああああ!?」

「何でも無いわよっ!!この鈍感男っ!!」

 逆ギレしてお風呂場から逃げ出す私。

「な、なんなんだ一体っっっ!?」

 北嶋さんは半分泣きながら、流した鼻血を拭き取っている。

 部屋に籠もって私は懺悔する。

「ごめん!!ごめんなさい北嶋さん!!」

 今回の事件、謝罪するのは、私も含まれてしまった…

 今後は絶対に大丈夫だから!!

 だからチョット!!チョッットだけ待って北嶋さん!!

 一人部屋の中、虚しい懺悔をする。

 本当に申し訳無い、と思ったのは、今回が初めてかもしれない……

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