パート8:2000文字_鉄壁スカート議論会

 ライトノベルのヒロインは、あまりにもスカートが短すぎる。

 際どいなんてレベルじゃない……もはや、風が軽く吹いただけで見えてしまうのではないか?


「全く……男ってすぐにそういうこと考える」

「いやな。見られたくないなら、ロングスカートを履けば良いじゃんか」

「ダメよ。校則で膝上十五センチってルールが決められているもの」


 世間的には膝くらいまでスカートを伸ばさないといけないという校則がメジャーだと思っていたが、何故かこいつの学校だけは膝上スカートを認可している……というか、強制している。

「スカートが短いからって別に無防備ってわけじゃないのよ。ほ〜ら、こんなポーズをしても全然見えないでしょ?」


 ヒロインは柔らかな身体で右足を上にぐいっと伸ばし、伸びたところで足首を手で押さえる。


「お、おぉ……」


 確かに見えない。

 足の角度を百二十度位まで拡げているというのに、布の面積がなんとも都合良く作用して太ももから上が絶妙に見えないでいる。

 後何センチずれたら見えるのだろうか、そんなきわどい所まで来ているというのに、目を凝らしてみても見えることはない。

 これがいわゆる鉄壁スカート、謎の力が作用して、決して世間に自らの下着をお披露目することがないセーフティガード。


「でもさ……」

「……ん?」

「その足を上げた角度のままで俺が立っている位置を変えれば、丸見えになるんじゃないか?」

「な"っ……!」

「俺が今から左に90度移動するじゃん?」

「…………」

「するとお前が足を上げている正面に立つことになるじゃん?」

「あ……あ……」

「お前の縞パンツが見えることになるじゃん?」

「や、やめ……」

「よし、やるじゃん!」

「止めろじゃんっ……!」

「ふぐっ……!」


 ヒロインが上げた足で俺にかかと落としを喰らわせてくる。

 あまりの激痛に目の前が真っ白になり意識が途切れそうになる。


 あと数秒早ければ……ヒロインの縞パンツを拝めたというのに。

 悔しさを噛みしめながら、俺はゆっくりと意識をうしな……


「ふふ、おやすみなさい……」


 ……うしなわず! 最後の力を振り絞ってヒロインの下半身へと目を向けるっ……!


「……っ!」

「よしっ、縞だなっ!」

「見るなっ……!」

「おぶっ……!」


 声高らかにパンツの色を叫んだ俺の顔目掛け、ヒロインはかかと落としした足をもう一度持ち上げ、膝を俺の顎へと命中させる。

 さすがに俺もこの攻撃には耐えることが出来ず、ゆっくりと暗闇へと堕ちていった。


 ………

 ………


「ちなみにこういう不可抗力によるセクハラ行為で男が一方的に暴力受ける風潮良くないと思う」

「そうかな?(というか、これ不可抗力だっけ?)」

「もしも男が女を殴ったら、フェミニストさん達が待っていましたと言わんばかりにギャーギャー騒ぐのに、逆の場合だと何も言わないよね」

「何というか、一種のご褒美みたいな扱いだから許されるって感じじゃない?」

「女からの暴力が?」

「女からの暴力が」


 別に誰に殴られたところで、痛いものは普通に痛いけどな。


「ところで、どうして縞パンツなんて履いているんだ?」

「縞パンツを履いちゃいけない理由なんてあったっけ?」

「もっと素朴な物を履けばいいのになって単純に思って」


「男だって奇抜なトランクス履くことあるじゃない」

「あれは男同士でギャグで見せる用だって」

「……私のパンツ、見せる用じゃないんだけど」

「え、そうなの?」

「……むしろなんだと思ったの?」


 世間で言う勝負用下着の一種なのかと思っていたけど違うらしい。


「でも……スカート一枚でしか守っていないわけだし、見られて大丈夫なようにしているのかも……しれないわ」

「いや、さっきメッチャ恥ずかしがってたじゃん」

「同性に見られても恥ずかしくないように!」

「同性なら恥ずかしくないのか?」

「ううん、恥ずかしい。見せるモノじゃないもの」

「………?」


 見せても大丈夫だけど恥ずかしい。

 よく分からない理屈。


「よし、今までの話をまとめようか」

「うん」


「女性のスカートは短いけど鉄壁で、ギリギリ見えない特別性能がある」

「うん」

「だが弱点もある。風や枝に弱いし、近くに男がいると何故か捲れやすくなる」

「何故か、ね……」


「だが、見られても自尊心を維持出来るよう縞パンツを履いている」

「赤、青、緑の三種持ってるわ」

「見られて恥ずかしくないというわけじゃない。慣れが必要」

「スカートは人生」

「同性に見られても意外とセーフ」

「でもやっぱり恥ずかしいような」

「でも恥ずかしくないような?」

「……?」

「……?」


「それでもって、異性に見られたらまず殴る」

「不可抗力♡」


 うむ、まとめてみたが……


「少しは私の意図を分かってもらえたかな?」


 ヒロインが俺の顔をのぞき込みながら問う。

 もちろん、俺の答えは決まっている。

 俺は大きく息を吸い込んで、心に決めた言葉を外へと放つ。


「う〜ん、分からんww」と。


 クソ終わり

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【連載】異世界転生モノ?2000文字以内で全部終わるよシリーズ タチマチP @String-like

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