パート7:2000文字_異世界編集担当者は大怒りの模様です


 テンプレで低クオリティな異世界作品ばっか作っている奴らに対して

 編集担当者はブチ切れている模様だよ。


 ※本作は小説であり、過激なネタがありますが、

  全てフィクションです(創作論ではありません)


▼下記から本編(2000文字)

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 私はとある出版社の編集担当をしている者だ。

 主に、新規で書籍を出版する際のテコ入れの部分を担当している。


 私の現在の悩みを聞いてくれるだろうか。

 現在、異世界の設定について深く考えてくれる執筆者が著しく減少していることについて、私は深く懸念をしている。


 この世界の全体的な大きさ、気候について、どのような想定で書かれているだろうか?

 どんな思いを込めて書かれているのだろうか?

 こんな簡単な概要について質問をしても、まともに受け答えできているものは、せいぜい一割程度にしかならない。

 え、う〜んと、その……みたいな感じにどもってしまい、ああ……全然考えていないなこいつっていうシーンに何度出くわしたことか、もはや数え切れない。


 漫画のほうだと、先生がそういう部分をむしろ細かすぎるくらいに考えているんだけどな。

 お前、全く物語の中で関わる部分じゃないところまで考える必要ないだろうってくらいに、作品に対する情熱を注いでいる者が多かった。

 作品の善し悪しにはもちろん起伏は多かったが、いい意味で情熱的なバカが多かった。


 しかし小説……というか、ライトノベルのほうが酷かった。

 なんか、とりあえず売れた作品を同じようにパクりまくって、これは僕の作品ですと胸を張っていうやつが、インターネットの小説投稿サイトが確立されてから増大した。

 いやな……趣味で書いてますってなら、むしろ微笑ましさを感じるのだが、これをガチで書いてコンテストに出して、落選して勝手にキレれる奴、お前は本当になんなんだよ。


 いいか、人は新しい情報を常に吸収したがっていて、その斬新さに魅力を感じて初めて財布を取り出してくれるんだぞ。

 てめえが他の作品を真似るように後追いして作った劣化作品に金を払う奴がいると思うか?


「おい、そこのエルフ。貴様の設定はちゃんと考えられているか?」

「え、いや……エルフってなんかそれっぽいのが何となく確立してるでしょ?」

「考えろよごるぁぁぁぁぁ!!!!」


「そこの作者。この漆黒の魔界電動術と書いて(ダークネスシャドウライトニング)と呼ぶらしいが、この名称の理由は?」

「ちょwww数秒で考えた俺の設定名を大きな声で言うなよwww恥ずいだろ?」

「作者が自分の書いた作品の世界観に恥ずいてんじゃねぇぇぇ!!!!!!!」


 まったく、小説家として売れることを軽視しているのかこいつらは。

 俺らも慈善事業で作品評価に時間を割いている訳じゃねえんだぞ……


 もうこれさ、実際に俺が異世界に行ってなんか新しい要素ぶっ込んで仕様を確立させた方が、まだマシな作品一本作れるんじゃねえか?

 今なら鼻くそほじくりながらインターネットに蔓延している作品以上のものを作れる自信があるぞ。


 良いかガキども。俺は別に作品をけなしたいわけじゃねえ。

 作品を作るのが下手くそなら、たくさん練習してうまくなればいい。

 最初から技術を極めているやつなんていねえ、むしろ編集担当者を利用してブラッシュアップするくらいの気質のやつがいるほうが、俺は応援したくなる。


 でも作品に自信がないものを俺に見せるな。

 ゴミを俺に見せつける気か?

 ハッタリでも最高に自信満々であると豪語してみろ。


 作品の設定を小馬鹿にするな。

 コンテンツ消費しかしないやつは、ものを作る設定をやたら馬鹿にしたがる。

 特にガキであるほど、人の作ったものを馬鹿にする。

 そういう馬鹿は相手にするな。

 自分に作ったものに誇りを持って、俺に作品を見せに来い。

 物語を0から作り上げることの出来るやつは、人を楽しませる可能性がある生産者だ。

 新しいものを作れる人間はそう多くねえ。

 お前は自分の殻を剥こうとする挑戦者だ。


 あと、異世界にやたら依存するんじゃねえ。

 ある程度世界観が確立しているから、世界観設定を考える必要がなくて簡単だろうが、本当のプロというのは、世界観からきちんと練り上げられるやつのことを言うんだ。

 本当の作品を作る場合、異世界というコンテンツから卒業する気質で動いておけ。


 売れている作品は、異世界なんてぬるい設定で作り上げられた世界じゃねえからな。

 他人の作品をぶっ潰すくらいの気質で新しい設定を被せてこい。


 俺達は確かに面白い本より売れる本を探している。

 売れるためなら内容をある程度改変するような行動を優先する場合もある。


 でも、俺達も書籍編集者だ。

 狭い枠をくぐり抜けて、本を通じて人に楽しいという気持ちを伝え続けたいと思っている。

 可能な限りはお前の書きたい作品に導けるように最高のアドバイスをしたい。


 だからもう一度いうが、自分の作品に自信を持って、本気で作品をもってこい。

 俺達はクリエイターを応援する。


 大丈夫だって。今さら会社が潰れるとか、いちいち考えてねえよ。

 意外と会社は頑丈なんだよ。

 それに、もしもお前が売れる作品を持ってきてくれれば、会社は確実に持ち直してくれる。

 本気が俺達の救世主になるんだ。

 準備はいいか?

 よし、待っているぞ。


 おわり

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