魔王「騎士は僕のものだから」

@rickhm

魔王「騎士は僕のものだから」

聖職者「魔族の子よ!神の慈悲を受けなさい」


魔王「やめてよ!死にたくない……」


村人「ついに魔王の後の二代目も処刑か」


村人2「二代目引き継いで3日もたってないだろ」


村人3「魔王じゃなかったら殺さなくても済んだんだけどな」


村の子供「あの子泣いてるよ?」


村の子供の母親「見ちゃいけません……」


騎士(やはり、騎士として子供が処刑されるのを見てるわけにはいかない……)


騎士(俺がしていることは正しいのか……?)


衛兵「ここは立ち入り禁止だ」


騎士「それでもあの子はこんな罰を受けるようなことはしてないんだ」ドンッサササ


衛兵「いて……」


騎士「逃げなさい、あなたを助けてくれる人は魔界にいるはずだ」


魔王「そんなことしたら……」


騎士「目の前の人を救う、それができてこそ人間だ」


処刑人「反逆者だああ!殺せ!弓を撃て」


騎士(人間も魔族も分かり合えるんだ……きっと)


弓兵「貴様!!」シュウィン


騎士「うう……ぁぁ」グサッ


魔王(人間の癖に助けて……あいつ)


魔王(目の前の人を救う……)


魔王(僕にはできないよ……)


貴族戦士「若くして、名族の俺を超えた騎士さんが反逆者か……愉快だね」


貴族戦士「身柄を拘束するぞ」


貴族戦士「なぁ騎士」


騎士「なんだ……お前もさぞかし憂さが晴れるだろう……」


貴族戦士「なんでさ……」


騎士「すまない、言い過ぎた」


貴族戦士(僕の気持ちもわからずに……)


貴族戦士(お前はいつも俺より違う何かを見てて……そして勇気があって……)


貴族戦士「お前なんかに……僕の気持ちがわかるか……わからないだろう」ブンッ


騎士「縄を解いたのか!?」


貴族戦士「うるさい……お前が勝手に逃げたんだ後は知るか」


騎士「俺は誤解をしてたのかもしれない」


貴族戦士「語り合う時間などないさ……いけよ」


数ヶ月後


騎士「……」


騎士(食べるものはモンスターの肉……森で世捨て人として暮らす…か)


騎士(かつての俺は騎士団の隊長だったしかし、今は……)


騎士(でも後悔はしていない、余生を楽しく過ごすのみだ)


エルフ「おや少年、モンスターの肉など食してよほどの事情か」


騎士「確かに若いが俺は……いやそうだな、うん、事情が……」


エルフ「元騎士団隊長さんだったりするわけか?」


騎士「ぐ!?っぺっぺ」


エルフ「食べ物を吐くなって汚いな」


エルフ「我は何も知らぬよ」




魔王の城


魔王「頭から離れない……」


魔王「騎士……生きてるのかな」


エルフ「見つけましたよ……」


魔王「本当に!?」


魔王「騎士って女の子だったっけ男の子だったっけ」


エルフ「声からすれば男ですね、おや好みですか?」


魔王「おかしいかな…?」


エルフ「人間と恋をして、今もずっと暮らしてる二人がいるそうです」


魔王「本当!?」


エルフ「ええ、あなたの家が魔王の家となったのはその家の血筋が途絶えたからです」


魔王「ってことは僕も騎士と……」


エルフ「魔王様、男同士ですよ?」


魔王「でもあいつのこと考えるとどきどきして夜も眠れないんだ」


エルフ「はいはい」


エルフ(魔王は強き者に惹かれてしまうものなのですかね、運命にさえ逆らったあの騎士のような)


魔王「騎士……」


エルフ「どこへ向かうのですか?」


魔王「ちょっと見回りに……」


エルフ「……そうですか」


エルフ(まぁついていけばよいでしょう)



騎士「偵察兵の目もあまり鋭くないな」


偵察兵「魔族のやつは殺せって言われてんだ、悪いな!」


偵察兵2「こいつの持ち物をもらっちまうか」


エルフ(なんで高級な服や装飾をつけていくのですかね……)


魔王「違うよ…!僕なんか売っても高くないよ!」


偵察兵「なんか勘違いしてるな、まぁいいや死ねや!」シュウン


騎士「殺すってことは殺される覚悟のあるやつだけだ」カーン


偵察兵「お前……指名手配の騎士じゃねーか!」


偵察兵B「曲者だあ!!」


騎士(あーあ、なんでこうなるかな、俺)


騎士(まぁいっか、目の前の命が守れればそれでいい)


エルフ「転送!」




魔王城


魔王「よかった、助かったよ」


エルフ「あの人も連れて来ましたよ」


騎士「何が起こったんだ」


魔王「騎士…!!あのね、僕…君のこと忘れれなくて…」


騎士「まぁ無事ならよかったよ」


魔王「優しい……」


騎士「……」


エルフ「正当な魔王の血筋が途絶えてから魔王家は弱くなりました」


エルフ「今の魔王様は戦う力などほとんど持ってないのです」


騎士「無理して戦うことはないよ」


魔王「ちょっと待ってて!僕の宝物を見せたいんだ!」


騎士「……」


騎士(昔いた弟がこんな感じだったっけ)


魔王「あの後エルフに色々調べてもらって集めた君の身の回りのものだよ!」


魔王「騎士のことならなんでも調べたよ!」


騎士「あー、俺のファンか」


魔王「ファンっていうか……できれば君と……」


騎士「あー、なんかわかった」


魔王「いいの!?」


騎士「すまんな、俺は恋愛とかそういうのはまったく」


魔王「……」


魔王「今はそうかもしれないけど……いつか君に認めてもらいたい……」


騎士「そうか、できるといいな」


騎士(この子は俺という心の拠り所に依存しようとしてる……)


騎士(この子は俺がいないほうが強く生きていけるのではないか?)


騎士(命の恩人だからと俺に心酔して自分を疎かにするのではないか)


騎士「少し長くいすぎたな、じゃあな」


魔王「もういっちゃうの!?」


騎士「お前さんの気持ちとやらが本当ならまた会えるさ」


騎士(もっといい奴を見つけな、こんな俺じゃ誰も幸せにできない)


魔王「騎士……」


エルフ「どうして騎士に逃げられたか、わかりますか?」


魔王「わからないよ…僕はこんなに好きなのに…」


エルフ「あなたが気の迷いで好きだと思っていると思われたからです」


魔王「そんなはずないよ!」


エルフ「彼が魔王様を助けたせいで彼の家族は今都から逃げ、田舎で暮らしてます、それもとても貧乏な暮らしです」


魔王「そんな……」


エルフ「彼自身わからなくなってるのです、義を貫く自分の生き方が正しいのか」


魔王「騎士……騎士は強そうで、悩みなんかないって思ってた……」


エルフ「あなたは自分にないものを彼に求めてるのではありませんか?」


魔王「……」


エルフ「彼以外にもいますよ、きっと運命の人は」


魔王「いないもん……いない…絶対にいないから!」


エルフ「どこへ!?」


騎士「…ったく」


魔王(見つけた……)


騎士「魔界での暮らしってのも意外と悪くはねーか」


騎士「貴族戦士とかとゆっくり話してぇなぁ」


魔王(……貴族戦士って誰だろう、もしかしてもう既に恋人がいるのかな)


魔王(でも今の僕ならメイドさんの服にも着替えてきたしきっと騎士に気に入ってもらえるはず!)


騎士「あー、もうここで寝ちゃうか」


魔王(路地で寝ちゃった……)


魔王(近くで見るときれいな人だな、人間っぽくないというか、目が光っていて獣人の目をしてるような)


魔王(あれ……ていうか昼間より獣人っぽいっていうか)


騎士「やべ……満月」


騎士「しまったぁぁぁぁ……ぅぅ」


狼男(騎士)「獲物……」


魔王「うわあああ」


エルフ「いけません!」


狼男「獲物……増えた?」


エルフ「どうやら、彼が人と深く関わるのを避ける理由がわかりました」


エルフ「彼は隠し続けていたんですね……」


エルフ「人類の敵のライカンだということを」


狼男「ガルウルルルウ!」


エルフ「脳が獣になってますね」


魔王「騎士は戻れないの!?」


エルフ「満月が終わればきっと」キーン


エルフ「並の剣なら折れるほどの打撃……あなたの強さは自分を奮い立てていたのではない、抑えられていたのですね」


エルフ :獣語で話しましょう


狼男 :わかるのか?……獲物になるきがあるなら……


エルフ :自分に問いかけてくださいあなたは何者ですか?


狼男 :俺は……俺は……逃げてくれ……わからないが今は何かまずい


エルフ :狼になると何も考えられなくなるのですね


狼男 :もういいだろ……戦おう……違う……なんだ……


魔王「騎士……!」


狼男「ガウウウ!」


エルフ「ライカンですか、その能力を手に入れたのは弟も関係ありそうですね」


狼男 :やめろ……俺の心を覗くな


魔王「騎士……なんでそんなに怒ってるの……?」


狼男 :だれもおれをしらない……おれはだれだ?


狼男「がううう!」ガシッ


魔王「僕のこと覚えてないの…?」


エルフ「彼は自分を見失ってるのです、一旦ここは帰りましょう」


魔王「放って置いていいの?」


エルフ「さぁ……魔界には強い魔物がたくさんいますから幸い大丈夫でしょう」


魔王「心配だよ…」ゴブリン「キキイイ!」


狼男「グルルル!」ザシュザシュ



早朝


騎士「俺は……なにをやってたんだ?」


騎士「このゴブリンの村を俺がやったのか…?」


騎士「……」


騎士(恐ろしい事だな……)


騎士(魔界にいてよかったのかもしれない……もしこれが人の村だったら……)



10年前


騎士弟「もっと山の奥までいこうよ」


騎士「やめておけって」


狼男「グルルル」


騎士「おいっ逃げろ」


騎士弟「えっ!」


狼男「グルルル」グシャア


騎士「やりやがったなああああ!」




騎士「思えばあそこで狼男にあってしまったのが運の尽きか」


騎士「この病はいつ治るんだ」


騎士(昔より抵抗力がなくなってきてるな、満月が出てもしばらくは大丈夫だったんだが)


騎士(そのうち人間じゃなくなるかもしれない……)


エルフ「魔王様があなたを探してます」


騎士「……まだ俺の事を諦めてないのか?」


エルフ「ええ、あなた以外を見てないといった感じですね」


騎士「魔王が嫌いなんじゃないんだ、あいつを見てたら弟がいるみたいで……」


騎士「だけど…俺はさ、無理なんだ、他人と関わるのが怖くてな」


エルフ(昨日の事は覚えてないようですね)


エルフ「ここの村を狼男が襲ったそうですね」


騎士「そうみたいだな」


エルフ「その狼男について知りませんか?」


騎士「知らないな」


エルフ「そうですか、ここのゴブリンはいい人達ばかりだったのですがね」


騎士「……っ。」


騎士「本当なのか?」


エルフ「ええ、知能も高く人間ともやりとりしていたと」


騎士(だとすると、俺は知能のある良い魔物を殺したのか?)


騎士(……、命では命で償うしかあるまい)


騎士「少し用を足してくる」


エルフ「死を選ぶのですか?」


騎士「……知ってたのか、関係ない話だ、いずれ俺は魔物になるんだ」


エルフ「あなたという人物でも、自分とは戦えないということでしょうか」


騎士「……何が言いたいんだよ」



エルフ「さっきの話は嘘です、そのゴブリンは魔界から出て人間の村を襲っていたのです」


騎士「なんでそんな趣味の悪い嘘を?」


エルフ「死ぬのはやめましたか?」


騎士「……、いいや?」


エルフ「あなたは戦わず忘れていたかった、でも病はあなたをそうさせてはくれない」


騎士「…もういいだろ、俺が死ねば終わる話なんだ」


エルフ「魔王様の為にもあなたには運命と戦ってもらわないといけません」


騎士「お前案外夢想家だな、この病の最後くらい知ってるだろ」


エルフ「なぜ最初の一人になろうとしないんですか?」


騎士「……」


エルフ「あなたは魔王までをも自分の理想のために逃がした人物なのに」


騎士「……もうやめろ」


騎士「俺の心を覗くのをやめろ」


エルフ(狼の血が覚醒してきてる!?)


狼男「グルルル」


エルフ(予想よりはるかに悪い状況ですね)


魔王「エルフ……」


エルフ「魔王様!?」


魔王「やっぱり騎士の居場所がわかるんだね……」


狼男「グワアアア」グシャ


エルフ「っぐ…」


魔王「どうして昼なのに……」


狼男「グルルル」


魔王「僕のこと覚えてないの?」


狼男「ウガアアア」


魔王「落ち着いて、怖くないから」


狼男「……」


狼男「エルフ俺を殺してくれ……」


エルフ「できません、魔王様のためにも、あなたを城へ連れ帰ります」


魔王「そうだよ、居場所がないなら僕たちのところに一緒に来てよ」


狼男「……」


狼男「うう……」


狼男「なぜ俺なんかにそんなに優しいんだよ……」


エルフ「涙ですか、どうやら人間性を取り戻したようですね」


魔王「帰ろう、僕らの家へ」


魔王「誰にも渡さないよ」


狼男「……許されるのか? こんな俺でも」


魔王「騎士は僕のものだから……」


騎士「……」バタッ


魔王「大丈夫!?」


エルフ「疲れているだけです」


エルフ(やれやれ、10年以上病を抑えているとはとんでもない人ですね)


エルフ(もうとっくに狼男として彷徨っていてもおかしくないですね)


騎士「……」


魔王「起きた?エルフが夕飯作ってくれてるよ」


騎士「あの時お前を助けたのは正義の為じゃない」


魔王「?」


騎士「たぶんあの場所で死にたかったんだと思う、自分が納得できる理由で」


魔王「……そんなに思いつめてたの?」


騎士「でもな、怖いんだ死ぬのが、誰にも言えなかったが俺は自分の意識がなくなることを誰よりも恐れていた」


魔王「大丈夫だよ、騎士だったら狼男になっても優しいままでいれるよ」


騎士「……やばいな」


魔王「どうしたの?」


騎士「……お前よく見るとかわいいな」


魔王「ふーん、やっと素直になった?」


騎士「あの日本当にお前を助けてよかった」


魔王「僕も捕まってよかったかもね」


騎士「ところで魔王は男だったよな」


魔王「そうだよ」


騎士「魔族って言うのは性別による違いが少ないのか?」


魔王「まぁね」


魔王「騎士の目……かわいい」


騎士「普段は人に馴染んでるが狼の目だぞ?」


魔王「素直じゃないなぁ~」


騎士「おい、どこ触って……」


魔王「嫌なの?」


騎士「お前なんか雰囲気が……」


魔王「騎士は優しくて子犬みたい……」


騎士「まじでそこはだめだって……」


魔王「よく吠えるね…ほんとに嫌だったらそうって言えばいいのに」


騎士「……あー、わかったよ」


騎士「後悔しても知らないんだからな」


魔王「ちょっと、騎士、僕のターンでしょ!?」


騎士「さぁな」


騎士「肌も綺麗だし本当に男とは思えないな」


魔王「やっと騎士と二人でこういうことできるんだ……」


騎士「おい泣くなよ」


魔王「ごめん、ずっと騎士とこうなりたかったから」


騎士「俺も人をこんなに好きになるの初めてだよ」


魔王「本当?」


騎士「ああ」


魔王「っ……」


騎士「痛いか?」


魔王「全然…すごくいいよ」


騎士「魔王……俺もっとこれから素直になる……」


魔王「ふふ……っ二人で歩んでいこうね」


騎士「気持ち良い……はぁ…はぁ…」


魔王「ん……ぁぁ」


魔王「騎士の気持ち良いよぉ……」


騎士「出すぞっ……」


魔王「騎士ので……騎士ので……いっぱいになった……」


騎士「魔王がいないともう……生きてけない」


魔王「ふふ、案外君が一番寂しがり屋だったんだね」


騎士「だめ……かな、こんな俺じゃ」


魔王「いいよ、もっと素直になっていいんだよ」


騎士「……」


魔王「ここは君と僕たちの家だから……」

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