風に舞うひとひらのようにささやかで、絶え間なく落ちるそれが切なくて

源氏物語に登場する女君のなかで、穏やかに包み込むように源氏を愛した花散里、夏子。
髪を落とした彼女の晩年を描きつつ、これまでを回想する物語です。
明るく生命に満ち、常にあたたかく在った夏の庭。
それと対照的に、寂しく雛びた北山の庵。
それが夏子の心の内を示しているようで、切なくなります。
凪いだ水面の下を流れる深い想いを。
舞い散るひとひらのような、哀しく絶えることの無い愛を。
閑な庵で空を見上げながら、沁々と思うばかりです。