8.アクアリウム
そうこうしていると巧たちがやってきた。
「ごめん、遅れて」
「ううん、大丈夫ですよ」
櫻井さんが天使のような笑顔で答える。
俺は巧を引っ張り、みんなから少し離れた。
「巧、そういうことするなら事前に言えよ。緊張で死ぬかと思った」
「ごめんごめん、で、どうだったの?」
「まあ、それなりに話せたかな?」
「ならよかったじゃん、また時間作るから頑張れよ」
「ああ」
俺たちはみんなのところへ戻り、まずは、ご飯を食べるためお店へ移動した。
みんなが注文を済ませ談笑しているとパスタが運ばれてくる。
「うまそー。なあ、優」
「うん、真田さんお店紹介してくれてありがとう」
「喜んでもらえてよかった。それより、真田さんって呼び方やめない?こうやって遊びにくる中なんだしマッキーとか、せめてさん付けやめるとか」
「私もー」
真田さんと三上さんが提案をしてきた
「わかった、じゃあこれからは真田と三上で」
「うん」
「了解。で、凛ちゃんの呼び方は?」
三上が不敵な笑みを浮かべて問いかけてくる。
「じゃあ、櫻井さんも櫻井でいいかな?」
「うん、いいよ」
了承を得られた俺はホッと息をつく、すると巧が
「でも、同じクラスに男子で櫻井っているじゃん俺は下の名前からまーくんってよんでるけど優は櫻井って呼んでるからさあ、、、」
「って言われてもなあ」
俺が困っていると櫻井さんが口を開く
「、、、いいよ、、」
「えっ、ごめんなんて?」
「下の名前で呼んでいいよ」
照れながら言う櫻井さんが可愛過ぎて俺まで照れてしまう
「じゃ、凛で、、、」
「なになに、2人いい感じ?私たちが遅れてる間にー」
三上さんがちゃかしてくる
「ちがうって、それより食べよ冷めちゃうよ」
俺たちはそんな会話をしながら食事をした。
これも、こいつらのアシストってやつなのか?
でも、サンキューな。
そして、俺たちは目的地である水族館へ向かった。チケットを買い中へ入り魚たちを見ていると館内アナウンスが流れる。
「このあと、13時よりイルカショーを行います。」
「イルカショーだって」
「いこいこ」
テンションが上がる真田と三上
声には出さないが凛もとても嬉しそうな表情をしている
「じぁ、行くか」
「おー」
巧の掛け声に返事をするみんな、そして会場へと移動した。
「えーと空いてる席は、あっちに3つとこっちに2つだな。じぁ、優くんと櫻井さんはあっちで、俺とまきちゃん、さらちゃんはあっちでいい?」
「ちょっと、何勝手に決めてんだよ巧。さくら、、凛の意見も聞かないで」
「いいよ、私は佐久間くんと一緒で」
その凛の言葉に俺はドキッとした。心臓の鼓動が早まる。
俺たちは席に着いた。
「凛、本当に俺とでよかったの?」
「うん、真希も沙羅も加賀美君のこと好きみたいだし」
(ああ、そういうことね。俺がよかったわけじゃなかったんだ。でも、チャンスはしっかり生かそう)
「ねえ、凛。俺の呼び方も優でいいよ。俺だけ下の名前ってのも変だし」
「わかった、優くん」
凛の優くんと言う一言がとても嬉しくこのあとショーに集中できなかったのは言うまでもない。
そのあとは、みんなで集合し残りの水槽を見て回った。みんなとの楽しい時間はあっという間で外に出た頃には日が沈み始めていた。
「じあ、帰りますか。俺と真希ちゃん沙羅ちゃんは帰る方向一緒だけど、櫻井さんは」
「私は電車で帰るから駅に」
「あれ、凛は巧と真田と同じ中学って聞いてたからてっきり家も近くだと思ってた。」
「凛ちゃん高校入学前に引っ越したんだよ。まぁ、遠くはないけど幼馴染としては寂しいなー」
「そうなんだ、じあ、俺と一緒に帰ろ。俺も電車だから。」
そして解散した俺らは帰路へと着いた。
「凛は何駅まで?」
「私は笹野駅まで。」
「えっ、うそ、笹野?俺と一緒じゃん。」
「え、優くんもなんだ。」
「うん、じゃあ、せっかくだし家まで送るよ。凛が嫌じゃなかったら」
「うん、お願いしようかな」
俺はとても幸せだった。カップルのような会話をしながら俺は浮かれていた。お互いに呼び方も変わり距離が近づいていた。本当に幸せだった。
次の日、あの事件が起こるまでは。
夕暮れの空に君と見た雲 胡桃乃かんな @kanna_kurumino
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