この作品を拝読して、初耳だったことが二つあります。ひとつは、「リュックサックからポスター」の意味です。「オタク」を自称する私ですが、メイドカフェが流行るはるか昔に成人してしまったため、恥ずかしながら、「ビームサーベル」は知っていても、タイトルの意味は見ただけでは分かりませんでした。いろんなオタク、いろんな楽しみ方があるものです。
二つ目は、主人公のような「三次元オタク」が抱える辛さ。私は「二次元オタク」なので、安心してお気に入りのキャラクターを末永く愛でられますが、「三次元オタク」の場合は少し事情が違うのだと、改めて知りました。
主人公が恋した相手は、三次元の猫耳メイド、つまり普通の女の子です。相手が生きているからこそ、拒絶されることもありますし、店を辞められたらもう会えなくなってしまいます。「控えめなオタク」の主人公にとって、しつこく付きまとうなんてもってのほか。彼の一途な優しさが泣かせます。
しかし、「控えめ」な彼は、愛しい猫耳メイドの事情を知って、ついに立ちあがります。しかも、オタク的なやり方で正々堂々と! 「非オタとは違うのだよ、非オタとは!」と言わんばかりに潔い主人公に、心底惚れ惚れいたしました。
オタクな男子高校生、須藤樹と、そんな彼がお気に入りのメイドカフェで出会った女の子、『まるちぃ』。初々しくまっすぐな二人の恋の行方を爽やかに描く物語です。
冴えないオタクで、ごく平凡な高校生、樹。それでも、好きな女の子へまっすぐに自分の思いを届けようとするその姿は、心をギュッと掴まれます。そんな彼の想いに、少しずつ動かされ、変わっていくまるちぃ——。お互いの心の動きが丁寧に、温かみを持って描かれます。
無理だと思うこと、不可能かもしれないこと。でも、本当に強く願うなら、まっすぐな気持ちで向き合うしかない。そうすることで初めて、何かが動く——かもしれない。
結果を考えてしまうと、きっと動けない。だから、叶えたいことには理屈抜きで食いついていかなければ。
平凡に思えた主人公が持っていた、相手を想うまっすぐに熱い心。それが現実を動かしていく心地よさは、読み手に前向きなパワーを分けてくれるようです。
15センチがギュッと心に染み込むラストも、とても若々しく爽やか。前向きな明るさに溢れた、気持ちのいい読後感の物語です。
言いたいことは応援コメントに全て書き込んでしまったので、そこから転載します。
「15センチ」の描写を、最後の最後に一瞬だけ出すのみにとどまる、その書き方に感銘を受けました。
お題を重視するあまり大々的にテーマを前面へ押し出した作品が多い中、本作はひっそりとさり気ない演出が良かったです。
人と違うテイストは、間違いなく武器になります。
新人賞は、似たようなありきたりの作風だと埋もれてしまいますから、一風変わった新しいものを探すのが主目的です。
主人公の冴えないオタクは、意気込みだけは立派だけど、結果を出せない力不足。元凶の不良どもに勝つのではなく、惨敗してしまう体たらく。
こういう所も新しいですね。大抵は、どうにかして勝ってカタルシスをもたらすのに(笑)。
他とは一線を画した個性派。そこを最大限に評価したいです。
まずタイトルに惹かれました。
いったいこのタイトルにどんな意味が込められているのだろうか、と読み始めれば最後、気付けば終わりまで一気に読み進めていました。
そして、起承転結のテンポが素晴らしい。15000字という制限の中、まったくストレスを感じずに読み進められることの快感といったら、たまらないものがあります。
気になるタイトルの意味も、ストーリーの中でしっかりと回収していて、後味のすっきりとした王道ラブコメになっています。
本当に、文句のつけようのないエンターテインメント小説でした。
是非、もっと多くの方の目に入ってほしいと思って、レビューをさせていただきました。
猫耳メイドさんに一途な思いを捧げているオタクの須藤君。
それは彼にとって至福の時間であり、大切な時間であった。
だが突然にそのメイドさんが辞めてしまい……
というところから始まるなんとも楽しく熱い物語!
王道ともいえるストーリーで、すっかり夢中になってしまいます。
コメディータッチで描かれる軽快な文章。
可愛い女の子はかわいく、男の子は実に男の子らしく、の応援したくなるキャラクター達。
さらにひねりのある展開と、現実味あふれるストーリー運びがなんとも魅力的な作品。
そしてメインテーマでもある15センチのもたらすものとは!?
とにかく楽しく読める作品です。
是非読んでみてください!
メイド喫茶。オタク。
この二つのワードで浮かび上がるのは、薄暗いイメージが多いのではないでしょうか。
ですが、15センチに至る確かな緩急とブレのない物語の筋道は心地よくラストへと作者様は導いて下さいます。
タグにある、「ビームサーベル」の正体は必見です。
一見しますと、オタクの知識がなければ読み辛いと感じられるかもしれませんが、そのような心配はありません。
メイド喫茶の店員さんも、オタクも同じ人間です。
受ける痛みや思いも同じだと、偏見を改める機会を与えて下さる作品だと感じました。
私も、アニメや漫画、ゲームを愛する人間の一人です。
素敵な物語を、ありがとうございました。
タイトルの、「リュックサックからポスター」にピンときたら、ヲタ検定2級の資格があります。
冗談はさておきまして、今作は「僕とキミの15センチ」物語参加作ということで、どこに「15センチ」を持ってくるのか楽しみに拝読いたしました。
主人公はメイド喫茶に入り浸る男子高校生。そして想い人はそこで働くメイドの女子高生。これだけでも、ヲタッキーが喜びそうなシチュエーションです。そこにふりかけられたスパイスが、絶妙に効いてきます。
そしてエンディングに、キーワードの「15センチ」が登場します。ここまでの運び方が、とても面白いのです。大トリに用いられる「15センチ」、これはぜひご覧いただいて、一緒に胸をキューンとさせませんか。40センチから15センチへ、と煽らせていただきます。