第4話

本社ビルに戻り、3人で先ほどの会議室へと向かった。

「なあ、2人とも何かしたか?」

「私は特になにもしてないわ。」

ミリアは乱れた髪を結び直しながら言った。

「お前そもそもなにもするつもりなかったろ!」

「まあね。でももちろん仲間の誰かが狙われてると知ったら撃つつもりだったわよ。」


ミリアは前線で活躍するというより狙撃銃のスコープで敵の動きを見張り、何か動きがあればスタウロや仲間に伝えるか、緊急を要する場合はそのまま狙撃する役目である。

ミリアもレックス同様、先ほどのように処理命令が出ない限りは基本的に暇なので狙撃銃には相当凝った改造を施しており、その改造技術やはスタウロも認めるほどであった。


「レイはやっぱり統括と話してただけか?」

「え、僕はそう、いつもの通り。話してただけ。」

そうは言っているがレックスとミリアはスタウロの命令でレイが処理命令の度に何人か殺しているのはなんとなく勘付いていた。

わざわざこうして聞いているのは、レックス達に話して少しでも気を楽にしてほしいというレックスなりの気配りであった。


レイは車や、大型船からジェット機まで乗り物と名の付くものなら何でも運転できる。傭兵時代にミリアに教わった狙撃術の他にも、対人格闘技をこなす。気が弱く臆病だが優しいところがあり、あまり兵士には向いてないとレックスは思っていた。


「そういうレックスは何かしたの?」

ミリアが聞いた。

「俺も別に何もしてねえよ。まあ1人に麻酔弾撃ったぐらい」

「思いっきりしてるじゃん!報告したのよね?」

「当たり前だろ!もう奴は回収されたってよ。」

「てことは、レックスはまた捕虜を…すごいな…」

レイが感心したように呟いた。

スタウロは見つけ次第殺せと命令するがそれに従っていたのはディノスに入ってから最初の2ヶ月だけだ。捕虜にしたほうがメリットが多く、まず話を聞くことができる。そして何より、殺さなくて済むのだ。

しかし話を聞けると言ってもゼノンの組織がどのぐらいの規模なのかとか、拠点はどこにあるのかとか、そんな情報は一切得られない。彼らは皆雇われの身らしく、必要以上の情報は与えられないそうだ。

レックス達も以前傭兵だったので、彼らの気持ちがよくわかるらしい。金の為にしている仕事の途中で死ぬなんて馬鹿馬鹿しいと誰もが思っていた。

それからレックスとミリアはスタウロの命令を無視し、殺すことはせず捕虜にしていたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Runaway 融奇はる @yukiimomushiharu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る