第3話
ディノスの本社ビル周辺の都市は丸ごと夕焼けの光に包まれた。
薄暮の住宅街で無闇に銃を撃つことはできない。
レックスは拳銃をしまい、消音麻酔銃に持ち替えた。
「量より質だ。俺がやらなきゃ誰がやる!」
物陰から足音を殺し敵と思われる陣側へ勢いよく飛び出した。しかしやたら強い西日が目立つ影を作ってしまう。
じっとしていれば、もしかしたら味方からの流れ弾が当たる可能性もある。彼は感情で飛び出してきてしまったことを後悔した。
「くそ…」
そうはいっても動かないとなにも思いつかない。敵と味方は向かい合う形で陣取っていることになるはずだ。敵の背後側に素早く移動を決めた。幸いそちら側に移動する時は西日の影響を受けなかった。
家や生垣、車の下などどこから見ても死角となるような場所を一瞬で割り出し、そこに身を潜めながら背中を向けているであろう敵を探す。
奥に行き過ぎたのだろうか、誰の姿も見当たらない。
と思った時、高いところから銃声がした。自分を狙ったものかと一瞬ひるんだが、どうやら違うらしい。右斜め前の方から聞こえたものだ。
車の下に潜り、頭だけを動かして銃声の主を探した。すると生垣の向こうにハイルーフ車が見えた。あそこかもしれない。
しかしその車の背後は生垣で完全に覆われていて狙いが定まらないどころか、そもそも本当に人がいるのかどうかさえわからない。
車の斜め前まで行って確かめるしかないが、多少のリスクが伴う。後ろにも横にも敵はいるかもしれないからだ。
さぁ、どうする。
レックスは目を閉じて可能な限りのシミュレーションを頭の中でした。
そうだ。
どっちにしろ危険なら生垣の中をのぞいてしまえばいい。
とっさに思いついたようだが彼はいつも考えるのが面倒なのでこんな調子なのだ。
思い切って車の下からその生垣へと進んだ。そして中を見た。
思った通りだった。レックスは持っていた消音麻酔銃を足に向けて撃った。
至近距離なので当然命中した。それに消音のため周りにも気付かれていないはずだ。
先ほどの車の下に戻り、ここからどうするかと考えようとしたとき、スタウロから連絡が入った。
「こんなもんでいい。引き上げろ」とのことだ。
レックスは来た道を静かに戻って行った。
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