第2話

パーキングフロアに止まっている全地形対応車(全応車ぜんのうしゃと呼ばれる)に乗り込み、レイが運転席に座った。

ディノス本社ビルはエリア1にあるのでエリア8まで降りなければならない。そのため大型車用のリフトを利用する。このリフトはかなりの高性能を誇る設備で、24時間体制でコンピューター制御されており、問題が発生しても自動修繕できる。だから故障して使えない、なんてことになったことが一度もないという。


エリア8に到着すると、リフト付近には全応車が10台ほど止まっていた。

少し遠くの方で銃声の響く音が聞こえてくる。

「もう始まってるわ。急ぎましょう」

ミリアは背負っている2つの銃のうち1つの狙撃銃の方を引っ張り出した。

レックスもレイも、続いて戦闘準備をする。

しかし3人とも人を殺すつもりなどない。

「できることなら…全員捕まえたいところだよね」

レイは俯いて呟いた。

「まぁな…俺もそうしたいのは山々だよ」

「とにかく行きましょ!じっとしてると危ないわ」

ミリアが建物の陰に、細い体を活かして隠れた。

人を殺すわけではないから、ここからは別行動というのがこの3人の暗黙のルールだ。

レイは小型の拳銃を片手にスタウロの元へと向かう。

レックスもミリアから少し離れた物陰に体を縮こまらせた。


「はぁ」

彼はひと息つき、コートの内ポケットからレイと同じく小型拳銃を取り出した。

散々改造をして、中身は塵1つないほど手入れを行き渡らせてはいたが、ディノスの特殊部隊に入ってからは2発しか撃っていない。

ということは最後に撃ったのは2年前ということになる。

傭兵時代は殺しが仕事であったから、人を殺す、というより敵となる者を始末することに特に抵抗はなかったレックス達だが、ディノスに入り、ディノスの供給するエネルギーで笑顔になる人々を見た途端、急に自分たちのしていたことは間違っていたということに気付いたのである。

それと同時にこの人達の役に立ちたいという思いも芽生えたのだ。

当たり前のことではあるが、幼少期から人の死がどれほどの物なのかという教育が甘かった彼らにとっては、ディノスのおかげでようやく真人間になれたような気持ちなのである。

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