Runaway

融奇はる

第1話

手が届きそうなのに、届かない。

このままでは彼女は永遠の闇の底に堕ちてしまう。

俺が、俺が彼女の手を掴まなければ……!


「レックス!」

いつの間にか居眠りしていたレックスは統括のスタウロに怒鳴られる。

「お前が中心になるんじゃなかったのか。口だけの奴は今回の計画からは外すぞ」

「すいません、ほんと、それだけは」

スタウロは改めてミーティングルームの四方に目をやった。

「いつから寝てたのか知らないが…改めて説明することにする。今回の計画はだな…」

スタウロが話し始めると今度は、けたたましいサイレンが鳴り始めた。


「エリア8に何者かが侵入したとの連絡あり。至急現地に向かい処理をお願いします。」


アナウンスの声だ。

「会議とは本当に思うように進まないものだな」

スタウロはイライラしながら横にあるコートを羽織った。

「会議はが済んでからだ!まずはエリア8に向かうぞ!」


彼の後に続き、会議に参加していた他の兵士たちも慌ただしく部屋を出て行く。


「はやく行きましょ。」

レックスの隣に座っていた彼の幼馴染、ミリアも立ち上がってコートを羽織った。

そしてその彼女の隣に座っていたレックスの親友、レイも席を立った。


「よし、急ごう」

3人はエレベーターで地下のパーキングフロアへと向かった。


そもそも何が侵入したのか。


レックス達3人はもともと、知る人ぞ知る敏腕の傭兵だった。その腕を認められ、世界的エネルギー供給会社のディノスという大企業の極秘精鋭部隊にスカウトされた。

しかしディノスの急速な成長と拡大を快く思わない者も当然いた。

中でも1番大きな勢力を持っているのはゼノンという謎の組織だ。ゼノンからディノスとその周辺の都市は度々襲撃を受けているのだが、どの程度の規模の組織なのかが全くわかっていない。

無駄な殺生はしたくないと当然ディノス側は思っている。世界的エネルギー会社がただの人殺し組織だった…なんてことには絶対になってはいけない。だから捕虜にしておくという措置をとってはいたがそれもわずかであった。当然大抵は射殺するしか方法がなかった。


今回もゼノンの連中の侵入と考えられる。

今日もこうして突破口の見えない無駄な殺生が始まるのだ…

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