とても短いお話ながら、情景描写と心情描写が巧みで、印象的な作品です。主人公の女性が「彼」との「停滞した関係」について、梅雨のある日、喫茶店で考える、そういうワンシーンなのですが、喫茶店や持ち物、通りの様子などの丁寧な描写から、ここに描かれていない「彼」との日々が浮かび上がってくるようです。そして、この後どうなっていくのか?それを想像する楽しみもある小品です。
梅雨時期の喫茶店。それだけで絵になるような場所で、彼を想う主人公。ジャズ音楽に雨音が溶け込み、喫茶店内の心地よい雰囲気が伝わります。主人公の気持ちと喫茶店内の雰囲気の対比がとても素敵でした。
一人でいる光景。「外」を観て、そして、自分の想いを確かめて。主人公の耳にも「聞こえている」雨音と、感情の機微が、まるでリンクしてなんだかとても心地のいい作品です。