滅びゆく世界に、女神の救いはあるか?

 主人公は、小国ニーミナの秘密を探るべく極秘に派遣された青年、ゼイツ。ニーミナが禁忌の力に手を出そうとしている、という証拠を探しに潜入する。
 女神ウィスタリアを崇める教会で、さまざまな人物と出会い、ゆっくりと交流を深めていく。

 捜査は遅々としているが、少しずつ核心へと近づいていく。真実に迫れば迫るほど、ゼイツは己の立ち位置に頭を悩ませる。
 一つの問題を解決しても、また一つ、二つと増える問題、謎。
 やがてそれは、国同士の小競り合い、腹の探り合いから、世界の存亡の危機へと姿を変えていく。
 その中で、ゼイツは、彼と出会ったニーミナや隣国の者達は、何を選択し、どう影響しあうのか。

 この物語は、絶望の中に差し込む、小さいけれど強く輝いている光を描く作品だと思う。
 誰かを思いやる心、守りたいものを守ろうとする行動力、それぞれが小さくとも、手を携えるすべを得れば、ほんのわずかでも希望を見出し、少しずつ事態をいい方向へと変えることができる。
 それはわたし達が今、暮らしている世界でも、同じではないかと感じさせてくれる作品だ。

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