資源の枯渇が著しく、衰退していく地球ーー
ジブル国の青年ゼイツは、父ザイヤから、ある任務を命じられた。連合に加盟せず、独自の宗教を守っている小国ニーミアへ潜入し、彼らが用いようとしている『禁忌の力』について調査せよ、というものだ。遥か昔に存在していたと伝えられる、魔法のようなエネルギー。現在は多くの国が使用を禁じている力とは、どのようなものなのか。
ニーミア国へ潜入し傷を負ったゼイツは、隻眼の美女ウルナと出会った。彼女に匿われながら、ニーミア国の内情を探るゼイツ。ウルナの弟クロミオ、ルネテーラ姫らと暮らすうちに、女神ウィスタリアを信奉するこの国の歪みが見えてきた。ウルナの隻眼の理由は。彼女たちの関与する実験とは? やがて、大国の力に脅かされるニーミア国で、ゼイツはある選択を迫られるーー
冒頭から緊迫感のある状況と、緻密で臨場感のある描写に惹きこまれます。間諜であるゼイツと、謎めいた美女ウルナの間で交わされる遣り取り、彼らの心が徐々に近づいていく心理描写が見事です。謎が謎を呼び、状況が次々と変化していくため、物語の進行から目が離せなくなりました。
滅びかけた地球で、彼らが最後に辿り着いた場所に、安堵させて頂きました。ダーク要素の強いSFファンタジーのお好きな方に、お勧めします。
主人公は、小国ニーミナの秘密を探るべく極秘に派遣された青年、ゼイツ。ニーミナが禁忌の力に手を出そうとしている、という証拠を探しに潜入する。
女神ウィスタリアを崇める教会で、さまざまな人物と出会い、ゆっくりと交流を深めていく。
捜査は遅々としているが、少しずつ核心へと近づいていく。真実に迫れば迫るほど、ゼイツは己の立ち位置に頭を悩ませる。
一つの問題を解決しても、また一つ、二つと増える問題、謎。
やがてそれは、国同士の小競り合い、腹の探り合いから、世界の存亡の危機へと姿を変えていく。
その中で、ゼイツは、彼と出会ったニーミナや隣国の者達は、何を選択し、どう影響しあうのか。
この物語は、絶望の中に差し込む、小さいけれど強く輝いている光を描く作品だと思う。
誰かを思いやる心、守りたいものを守ろうとする行動力、それぞれが小さくとも、手を携えるすべを得れば、ほんのわずかでも希望を見出し、少しずつ事態をいい方向へと変えることができる。
それはわたし達が今、暮らしている世界でも、同じではないかと感じさせてくれる作品だ。