第3話私の名は

私は、牢屋から解放され、煌びやかに装飾された部屋に通された。まだ右肩は痛むし動かせない。

10畳ほどのその部屋にテーブルがあり椅子が四脚置かれていた。テーブルには見に覚えのあるカバンがあった。私のカバンだ。

「さて、かけてください」

言うと、ククラスは椅子に座りこちらを見た。ザンジバルは立ったまま壁際にいる。ちょっと不機嫌なようだ。ま、どうでも良いが……。

「単刀直入にいいます。あなたは何者ですか?」

ククラスは穏やかな表情で言った。

「城下街にてのザンジバルの騒ぎは途中からではありますが見ていました。ザンジバルへのあの攻撃の動き。只者ではないですね。しかも、街人たちに飛び火しないようにわざとザンジバルに撃たれた」

なんなんだ? この人は。

「そして、所持品を調べさせていただきました。ポケットナイフにライター。取材帳と書かれたノート。そしてこのカバンです」

カバンを軽く持ち上げ、にこやかに言った。

「どうも、鍵が掛かっているようで、開きません。開けて中を見せていただけますか?」

「そのカバンの中身は大した物はありませんよ。財布とかです。どうしてもというなら……」

「ええ、どうしてもです。お願いします」

間髪いれずに返事をし、私にカバンを手渡した。

私は左手の親指と右手の人差し指をある基盤に当てた。するとカチっと音がしカバンの鍵は解鍵された。そして、カバンの中身をテーブルに開けて見せた。

「なるほど、指紋認証式でしたか。どこの技術でしょう。」

言いながら、カバンの中身を調べ始めた。

中身は、財布とロープ。ロウソク数本、古びれた地図、非常食の干し肉、以上だ。


「これがすべてですか?」

「はい、これがすべてです」

「わかりました。では、最初の質問に戻ります。あなたは何者ですか?」

顔色を変える事なくククラスはこちらを見た。

「私の名は、ゾフィア・ティーナ・レヴィ。とある会社の社員です。このカバンはその会社の備品です」

「では、ゾフィアさん。この国に何をしに来たのでしょうか?まさか観光ではないでしょう?」

少しも顔色を変えず続ける。

「私はこの国の防衛軍指揮官であります。このザンジバルの始末は私がしますが、あなたがこの国にとって害を成すようであれば……」

言うと、腰の剣をキンっと鳴らし威嚇した。ザンジバルと違いこの男は強いと私は感じた。

「……。 調査ですよ。このシント国に古くから伝わる伝説の調査……」

私がいい終わるより前に

「無駄だ。そんな伝説なんて、所詮伝説だぜ!」

ザンジバルが口をはさんだ。

「どうやら、あるようですね。千年王の伝説……」

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アドラムカムによろしく 宇松谷 雅修 @gashuu99

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