第2話ザンジバル・ハカム

「ぐふぇらぁっ!」

そのデカイ図体を宙に浮かせながらザンジバルは声を上げた。

私は瞬時にザンジバルの懐に入り、身体を横回転させて顎に蹴りをいれた。


ドダンっ。と大きな音を立てながらザンジバルは地面に落ちた。


「あ……」

ついやってしまった。憲兵隊の方を見る。

憲兵隊の無事な2人は撃たれた仲間を介抱しながらこちらを見ていた。

ザンジバルは「ううっ」と唸りながら起き上がった。

「き、きさまぁ。許しやしねーぞ」

首をグキっと鳴らしザンジバルは態勢立て直し、身構えた。こんな街中でまだ銃を使われるのはマズイ。

「話合いません? ちょっとした間違いです」

「なにが間違いだっ! 貴様は殺すっ!」

ザンジバルはすかさず銃口を私にむけ発泡、

私は後ろに飛ばされた。おそらく数秒だろうか?

しかし長く感じる。私は空を見上げて地面に落ちた。

「俺様にたてついた報いだ!」

「っかぁはっ」

右肩に激痛。右腕は動く気配がない。

不覚をとってしまった。

「さて、トドメを刺してやる! 」

ズカズカとザンジバルは私の方に近づき、私の顔面めがけて銃を構えた。

途絶えそうになる意識の中でザンジバルの顔が視界に入った……。

ドンっ!


……。

「また夢か……」

煌びやかな装飾を施された神々の像が12体目の前に立ち並んでいる。

「まだ人間を諦めないでください」

私は像たちに向かって言った。

「人間の真理。人間として示してみよ」

「愚かな人間の最期まで時間がないぞ」

中央の像の方からそう聞こえた。

次の瞬間突然水中に投げ出された……。

「また夢か……」


意識が戻り目を開けると、見知らぬ天井があった。どうやら右腕は動かない。体を起こそうとしたが動かせない。縛られている事に気付いた。

「どうなってしまったんだ?」

私は視界の届く範囲で見渡した。

どうやら牢屋のようだ。頑丈そうな鉄格子が目に入った。

「あのぅ! すみません〜どなたかいらっしゃいませんかぁ?」

私は可能な限りの声量で叫んだ。

暫くすると部屋の外にあるであろう扉の開く音がした。

「気がつかれましたか? 肩を撃たれいたようなので全身拘束させていただきました」

すっきりとした顔たちの金髪の男が言いながら牢屋に入って来た。高級そうな服装だ。

「いや、はやありがとうございます。 死んだかと思いました」

私は相手の動向に気を配りながら言った。

「私はククラスと言います。 このシント国の王家の者です」

「!? 本当ですか? 一体どうなっているんでしょうか?」

思わず声にしてしまった。と、ドンドンと足音が鳴り響き、

「俺が貴様にトドメを刺すのをククラスの兄貴に止められたんだよ!」

牢屋に響く聞いた声を発しながらザンジバルが姿を現せた。顎は赤く腫れていた。私の仕業だな。

「……。 イマイチ状況がつかめないのですが?」

拘束を一つ、一つ外しながらククラスが口を開いた。

「ザンジバルの悪態には困っていました。私が駆けつけザンジバルを制止し、あなたを手当てしたのです」

最後の拘束を外して私の体を起こす。

「何名か命を落としてしまいました。ザンジバル!あなたは暫く謹慎です」

話す内容がまだ飲み込めない。ザンジバルがならず者で、ククラスは王家……。 が、今ふたりはこうして同部屋にいる。ザンジバルは拘束されてはいない……。

「説明が抜けていましたね。このザンジバルもまたシント国の王家の血筋の者なのです。私の名はククラス・ハカム。ハカム家はシントの王家本家にあたります」

「……。 余計分からなくなりました」

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