アドラムカムによろしく
宇松谷 雅修
第1話シント王都
……またか
またあの夢か……
「ならば、実際にその身で人間を示せ」
あの日の夢は時より現れ、私の頭を支配する。
……なかなか難しいですよ、人間。
ギシギシと鳴り響く車のタイヤの音に私は目を覚ました。
ヒッチハイクでお邪魔した車の酷く狭くお世辞にも綺麗とは言えない荷室に横たわりながら窓から外をみた。
「起きたかい? もうすぐシント王都だよ」
運転席から車のオーナーのおじさんがガラガラの低い声で聞いてきた。
「ありがとうございます。三日間ろくに寝ていなかったもので……。すっかり寝入ってしまいました」
私はお気に入りのハットを手に取り体を起こし、運転席に向かって言った。
「まあ、詳しく聞けないと思うがシント王都に何しに行くのさ? 今は治安はマシだと聞くが」
「ええ、ちょっとした取材です。シントの歴史について調べてまして……」
ちょっと困り気味に言ってみる。
「シントの歴史かぁ。謎が多いと聞くが…。あまり深くは突っ込まないのが身の為だぜ」
心配そうに言ってきた。
「わかりました。肝にめいじておきます」
しばらく車を走らせていると前方に何重もの城壁に囲まれた城が見えてきた。
城壁の周りには城下街が広がり、昼下がりの太陽で屋根が煌びやかに光っていた。
シント王都の国有地の8割は緑豊かな森林地帯になっている。
私はシント王都南西のカタクサと言う小さな中立国経由でシントに入国し、そこでこのおじさんに拾われたのだ。
ギギーィ。軋むブレーキを響かせて車は止まった。
城下街の入り口にある給油所だ。
「こっから先には歩いていくしかないよ。城下街内の乗り物は馬車のみ通行可能だからな」
おじさんはニコニコとこちらを見ながら言った。
「ありがとうございます。おかげで体力も回復できました。差し上げられる物がこれしかなくて……」
私は上着のポケットから古びた細工のペンダントを取りだし手渡した。
「……お前さん、この紋章……ま」
おじさんがいい終わる前に荷物を降ろし礼をし車を後にした。
給油所から10分ほど歩いたら所に
賑わいを見せるレストランが見えた。
「うむ、ちょっと小腹が空いてきたか」
レストランの入り口へと向かおうとした瞬間、
店内よりドンと銃声が鳴り響いた。
「野郎っ! 撃ちやがったっ!!」
「きゃぁぁああ! 」
「憲兵を呼べっ! 」
様々な声が飛び交う中レストランから1人逃げ出してきた。
「ど、どけぇ! 」
私はひらりと彼を躱し、走り去る後ろ姿を見ようとした。
ドン!
ともう一発銃声が響いた瞬間。彼は地面に倒れこんだ。
あら、上手いな。心臓か
「がははは! チンピラ風情がこの俺様に口答えするから、そうなるんだ! 」
耳障りなタイプの低い声がレストラン内から聞こえてきた。
チラッと目をやるとデカイ図体。見るからにタチの悪い出で立ちの男が手下らしき輩をつれて出てきた。
「……このザンジバル様に歯向かう奴はこうなるぜぃ! わかったかぁああ!? 」
鬱陶しい声で叫びやがった。街人たちは怯えきっている。
ググっ。
私はイラつくのを我慢した。
なにせ着いたばかりだ。ここで問題を起こせば後の行動に差し支える。
ザンジバル様を横目にやり過ごそうとレストランから離れようとした。
「憲兵隊だ! 道をあけろぉ!!」
制服を身にまとった男たち5名が駆けつけた。
誰かが憲兵隊を呼んできたらしい。
「またお前か。ザンジバル・ハカム」
「お前には前回忠告しておいたハズだ。王都及び城下町にて問題を起こせば……」
ドンッ!
「きさま!! 」
ザンジバルは憲兵の1人に発泡した。
奴の得物はクリスター社のリボルバのようだ。
「みなさん、ここから離れてください! 」
「憲兵隊よ、このザンジバル様にたてつく気か? 」
ドン!ドン!
また1人また1人とザンジバルの弾をうけ倒れていく。
私は無意識に臨戦態勢に入っていた。
「そこらへんにしておいたらどうです? 」
「なんだ貴様っ? きさまも俺様に歯向かう…」
ドン!
デカイ図体が地面から浮いた。
ザンジバルが言い終わる前に、私は一手を入れていた。
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