第1.5話 心からの悲鳴

あぁ・・・・・・、私はいやだったのだ。

自分の役割を全うすることが。

恐怖だった。

その身に降りかかる重圧が。


私は生まれながらの生贄として生を受けた。

この生贄の役割は代々王族が引き受けていた。

ゆえに王族は大切にされ、保護されてきた。


王族である私は、兄弟の中でも強い光の力を持っていた。

いや、違う、光を維持するだけの燃料を持っていたといったほうが正しい。


生贄はこの力を生贄としてささげられた瞬間から蝕まれ始める。

老化が止まり、病さえも罹患する権利を失う。

その代わり、光の力を失うまで、私の心、魂は燃やされ続ける。

病死や老衰といった死の逃げ道がないことから、この役割を割り当てられたものは、絶望の淵に陥ることだろう。


私はその一人だ。一人ということは、ほかにもいるということ。

この生贄は最低5人は必要なのだ。


その中で王族は必ず1人加わることになっている。

現在は、私の父が光の燃料として内なる火で燃やされ続けている。

父は10年前から、その前は父の弟が、その前は祖父が、と代々続いている。


私は、次の生贄だ。父は後持って5年ほど。それまでには燃え尽きてしまうらしい。

父の光の力は大きくなかった。

しかし、父以外の王族の直系はあとは、その子供たちだけなのだ。


幼い子供たちを差し出すことができなかった王は、自らを差し出した。

しかし、その代償はやはり大きい。


父の苦しみさえもあざ笑うかのように、この世界の光は急速にその輝きを失っている。

急速な減少の原因はほかにもある。むしろそれが一番の原因なのだ。


生贄は5人。そう、5人なのだ。

しかし、生贄の祭壇にある椅子に座っているのは、王である父ただひとり。

あまりにも供給量が足りない。それは誰の目にも明白なことであった。


ほかのものは逃げだした。

一度囚われれば、終わらない苦痛があるとわかっていて、素直に従うものはいない。

本来ならば、すぐにでも捕らえて、捧げる事ができるのだが。


父がそれを許しはしなかった。

「放っておけ。」

その一言しか発してはくれなかった。



それから10年の時が経ち、光が殆ど失われたと言われて、ようやく各国は動き出した。

生贄を捕らえる準備を整えだしたのだ。


そして、その中には、光の力を持たないのに、不老不死のものが存在し、その者がこれから私たちを捉えてゆくことなど、まだ予想していなかった。

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暗い世界の攻略方法 プリンセスたけし @kokiyama

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