episode3


放課後、オレンジ色の光が教室に射し込む。

綺麗だなんて呑気に考えながら現実逃避しても、目の前で仁王立ちしてる彼は何処かへ行ってくれるわけでもなく。


ただ気まずい空気が流れる。


「(…いや、どっか行けよ)」


何故私が窮屈な思いをしなければならないのか、全然理解ができない。

荒木くんは少し考えると近くの誰かの椅子にどかっと座って足を組んだ。そんな急な行動に固まると、彼はいつもの様に得意げな笑みを浮かべた。


「照れてるだけだろ、」

「……は?」


「俺はとてつもなくかっこいいし頭いいし運動ができるのに、頑なに断れる理由がわからない、」


"だから、気を引きたいだけなんだろ"と納得したとでも言うように彼は鼻で笑った。


…いやいやいや!思ったことしか言ってないから!

なんて顔面蒼白になってる私を見て、彼はまた気に食わないのか私をキッと睨んだ。


「意味がわかんねぇ、」

「いや、意味わかんないのこっち」

「……俺のどこが駄目なの?」

「ナルシストなところ」


「ナルシスト??俺が??」


顔を歪めて正直に言うと彼は首を傾げて不思議そうに見つめてきた。

自覚なしとか少々困ったものだが、これで唯一分かったことがある。これ以上話を続けても、通じないということが。


「では、これから見なきゃいけないテレビがあるので失礼します」


彼に軽く会釈して、足速にこの場を去ろうとするとガシッと腕を掴まれる。「なんなんですか、」と振り返ろうとしたらそれを遮って彼は言った。



「俺が惚れさせてやるよ、お前のこと」



ありきたりな少女漫画でよく聞く台詞。

それを恥ずかしがるわけでもなく自信満々にいう彼は相当面倒臭い。



「結構です」



そう言うと予想外なのか彼は固まってぽかんと私を見つめ返してきた。そんな彼から手を離してそそくさとこの場から逃げた。

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ナルシストは受け付けません。 ちな @aiko52

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