episode2


「ねえ、ゆっか」

「ん?」

「…荒木くんが睨んでるんだけどなんかした?」

「………。」


体育の授業が終わり、男子は教室に戻ってくると案の体彼は私を見定めるように見つめてくる。絶対合わせてはならないと思い、必死に本を睨んでいると友達の楓に話し掛けられた。


苦笑いの彼女に私も苦笑いを浮かべて、さっきの状況を説明すると彼女は余計に困ったような顔をした。


「はは、流石だね。荒木くん」

「……ナルシストすぎて怖いけどね」

「イケメンだから許されるんだよ」

「許されないっての!」


私は平穏に暮らしたいんだ。なんて訴えると、彼女は頑張れと一言でそのままそそくさと逃げていった。薄情な彼女に嘆くように机に突っ伏すと上から声がふってくる。


「おい、」

「……。」

「寝るな起きろ赤城」

「このまま一生の眠りにつかせてください」


そう言った私のセリフを無視して彼は強引に机から私を引っ剥がす。

大きな彼の二重と目が合って思わず固まると彼は得意げな表情を浮かべた。


「あんた、俺に惚れてんでしょ」

「・・・・はは、」

「図星??」

「ごめんなさい、違います」


「なっ……俺に惚れない女がいる訳ねーだろ!」

「目の前にいます」


信じられないとでも言いたげな彼の表情に、今出来る精一杯の笑みを浮かべる。

私になにか言おうと彼は口を開くがチャイムがそれを遮って名残惜しそうに彼はこの場を去っていった。


……ナイスチャイム。

なんて思いながら入ってきた先生にバレないようにガッツポーズをする。



「げ、」

「………」



そのガッツポーズを荒木くんに見られて思わず声が漏れる。

彼は不機嫌そうに号令とともに前を向いた。


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