第5話 ただの週末
「なぁ」
「ん?」
「おまえさぁ」
「うん」
「カヤのこと好きだろ」
「ブフッ、なんで急にそんなこと聞くんだよっ!」
「汚ねぇな、おい。別にいいだろ週末なんだし」
「ったく、なんでわかったんだよ」
「別に、だってバレバレだぞ?俺たち何年一緒にいると思ってんだよ」
「はぁ~、これだから幼馴染って嫌なんだよチクショーッ!」
「お前そんなところ転がってっと草だらけになるぞ」
「別にいいじゃん、週末なんだし」
「まぁ、そっか。んでどうなんだ告るの?」
「・・・いいや、恥ずかしいし」
「そんなんでいいのかよ。せっかくの週末だぞ?」
「告白に週末もクソもあるかよ、ぜってぇ嫌だ」
「・・・そういえば、おまえスマホに新しいアプリ入れたんだよな?」
「ん、あぁ」
「どうせゲームだろ、ちょっと貸せよ」
「別にかまわんけど・・・」
「ほいっと・・・」
「・・・おい、なにしてんだ。それ絶対にゲームするときのスマホの持ち方じゃないよな?」
「あ?お前がいつまでたっても告んないから、俺が代わりにラブレター打ってる」
「返しやがれこのくそったれっ!」
「はい、時すでにお寿司と・・・おっ、既読付いたぞ」
「最悪だ最悪だ最悪だ・・・」
「あっ、返信がきたぞ」
「・・・なんて書いてあんだよ」
「『すみません、週末なのでそんなこと考えられません。ごめんなさい』だとよ」
「なぁ。これって振られたのか?オレ」
「さぁ、振られたんじゃね」
「適当だな、おまえ」
「そうやって17年生きてきたんだよ俺は」
「・・・なぁ」
「なんだよ」
「お前さぁ、童貞?」
「・・・いや」
「マジかよっ!いつヤったんだよ、俺の知らない間に。てか彼女いたのかよ!」
「大体そんなことなんでいちいちお前に言わなきゃいけねぇんだよっ、彼女はいる、ちょうど明日で4ヶ月の記念日」
「はぁ〜、俺は告るの失敗してその隣の幼馴染は彼女もいてましてや、童貞卒とかありえねぇだろマジで、んで誰だよ彼女」
「当ててみ?」
「カスミ」
「ちゃう」
「レイナ」
「ちげぇ」
「マナ」
「全然違う」
「カズヤ」
「ちげぇし男だろ、それ」
「ダァーッ!わかっかチキショーっ!」
「答え」
「お、おう」
「カヤ」
「・・・は?」
「そっ、おまえの片思いの相手。俺の彼女」
「・・・死ねぇーっ!オンドリャぁーっ!」
「やっ、やめろって」
「死ねっ!朽ちよっ!果てよっ!滅びよっ!×10の3乗っ!」
「てめぇがいつまでたっても告んねぇのが悪いんだよばかっ!」
「うるせぇっ!俺が片思いしてんのずっと知っていながらひでぇだろテメェっ!」
「いいだろっ別にっ。テメェが遅ぇのが悪りぃんだったって!」
「クソォーっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ」
「河原に来てまでなにやってんだか」
「ハァ・・・ハァ・・・うるせぇ・・・」
「なんかいいなこういうの、昔の青春ドラマっぽくて」
「ハァ・・・ハァ・・・ぶっ殺す・・・」
「ほら、鼻血拭けよ」
「・・・ありがとよっ!」
「ッツ!ぶん殴ってんじゃねーっ!」
「これで最後だよバカっ!」
「イッテェー、わかった悪かった。俺もなんも相談せずに交際したのは悪かったって認める」
「ハァー、もうなんかどうでもいいや。どうせ週末だし」
「あぁ、週末だな」
「・・・なんかさ」
「ん?」
「信じらんねぇよな、もうあと15分で世界が終わるって」
「まぁ、な」
「高校卒業せずに、彼女も作らず、成績も平凡、何か特技があるってわけでもなく、しかも童貞・・・なんか言ってて恥ずかしくなるな」
「たしかに」
「その上あと15分で死ぬとか最悪のクソだな」
「たしかに」
「なぁ、おまえ幸せだったか?」
「ん?まぁそれなりに?」
「いいよなおまえは彼女もいて童貞卒してんだから」
「・・・俺はな、おまえと一緒にいた17年間を幸せって言ったんだぜ?」
「は?」
「たかだか女と4ヶ月付き合ってHしただけで人生幸せとはいえねぇよ」
「その女が俺の片思いの相手なんだが?」
「とにかく、俺はおまえとこうやって17年間、馬鹿騒ぎできて幸せだったよ」
「・・・だったら俺も幸せだったんだろうな、まぁいっかどうせ死ぬんだし」
「あぁ」
「来世ってあると思うか?」
「いんや分からん」
「・・・また会えるといいな」
「あぁ」
「なぁ、また会おうぜ?」
「そうだな、まぁ付き合ってやっか」
「そうだ、ひとついいか?」
「なんだ?」
「次俺の片思いの相手奪ったらぶっ殺す」
ただの終末
会話劇場 西木 草成 @nisikisousei
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