第4話

「マスター、明日、お誕生日ですわね」


「そうだね。サリア?何かしたいことある?」


「マスターのそばにいられるなら何でもいたしますわ」


今日は1日サリアとゆっくり過ごせた。夜に帰ってきた僕はいままで作った洋服を広げてみた。小さなドールハウスにしまっていた洋服。


「マスター見てください!これマスターが恥ずかしがりながら作った水着ですわ」


「そんなのも作ったな……もういいよそういうの!」


水着を作ったときは足が隠れるように パレオも作った。サリアの足には傷がある。醜いからと周りの人間に掴まれて振り回された時にできた傷が。僕は何も出来なかった。泣いても泣いてもサリアは笑うだけ。僕が無事ならいいと笑うだけ。


「あ、これはマスターの学校の制服ですわ。私がお願いしたものですわね」


たくさん、たくさん作った。サリアは面白がってファッションショーを始めた。洋服の数だけ思い出がある。サリアがいるだけでよかった。サリアは思い出したように台所から袋を引きずってきた。


「店長からいただいてましたよね。マスターのお誕生日にと。マスターも大人の仲間入りですわね」


ビールが入った袋。飲まなくてもわかる。僕は酒は弱い。でも、飲んで損はないと店長に渡された。誕生日祝いだと。迷惑でしかない。だけどどこかで嬉しかったんだ。僕はそんな好意に素直に喜べるんだ。


「マスター、今までありがとうございました。マスターのおかげで楽しかったですわ」


「僕の方こそ。サリアがいなかったら僕は死んでたかもしれない」


「いけませんわ。マスター。マスターが生きてくださらないと私がマスターを見つけることができませんわ」


「うんわかってるよ」


日付が間もなく変わる。僕は今まで怖くて言えなかった言葉を伝えた。


「ありがとう、愛しているよ」


「マスター……幸喜様!私も愛していました!絶対見つけますから」


妖精はマスターが大人になると消える。大人になる前に人間として正しく過ごせるように妖精は姿を表す。サリア、僕は君を失って生きていく自信がない。でも、あの話を、信じるなら生きていく。



サリア本当に見つけてくれる?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る