第2話

サリアをつれて歩けばみんなが嫌な顔をする。汚いものを見るように。サリアがどんなに美しいかわかっていない。僕たちの前にチャラい男が来た。


「あれー?青柳君じゃん?何その妖精?汚いな!!」


「お前の妖精と一緒にするな……」


「あ?何言ってくれてんの?ボッサボサの髪で、シャツもよれよれでちゃんと風呂入ってんのかよ?」


「ふふ、お風呂なら私がお世話いたしてますから大丈夫ですわ。マスターのご心配ありがとうございます」


サリアは本当にできた女だと思う。さっきから僕につっかかるこいつは妖精の姿が見えない。ほらみろ、自分の妖精に自信がないんだ。サリアは違う。悔しそうな顔をして逃げるように帰っていく。これ以上僕につっかかるとさらに妖精の姿が醜くなる。だから下手な事はできない。僕はサリアを肩に乗せてぶらぶらと歩き始めた。今日はサリアに新しい服をあげたい。路地裏の寂れた店に来た。


「マスターいいのですか?このお店は私の衣服の生地を売ってるお店ではありませんか?」


「いいんだよ。サリアには綺麗な服を着てほしいからね」


「嬉しいです…マスターありがとうございます…」


ここは醜い妖精を少しでも綺麗に見せるようにと作られた店だ。普通の店だとサリアは入れない。嬉しそうに飛び回るサリアが可愛らしくてしばらく眺めていた。サリアが僕を呼びつけたのでサリアが気に入った生地を触ってみる。黒いレースがついた生地はけして触り心地はよくない。ガサガサしていて糸がほつれている。レース部分も数ヶ所重なってて見た目が悪い。それでもサリアが気に入ったのだ。サリアには優しい生地がいい。僕はその生地といくつか目についたものを手にした。


「青柳君、まだ引き込もってんのかい?」


「今こうして出てんじゃん。店長。これもらうからね」


「万引きはだめですよマスター。きちんとお支払しましょう?」


僕は生地を購入したあと部屋に戻った。あの店にあるのはいわゆる商品になれなかったものだ。質が悪い、糸が出てる、色が落ちた。そんな理由ではずされた品ばかりだ。少し違うだけで落ちこぼれたものたち。


裁縫箱をとるとサリアを座らせた。どんな服にしようかサリアと話しながら作る。僕の話し相手はサリアだけ。


「マスターのお洋服大好きですわ。この世に1つだけですもの」


「そうだね、世間的に綺麗な妖精の服は大量生産だもんね。サリアのは僕が作ったオーダーメイドだ」


「うふふ、楽しみにしてますね」


どんなデザインにしよう?サリアは継ぎ接ぎが好きだ。そこだけ違う生地があるとみんなが仲良くなったようで楽しいと言った。サリアはどんな妖精よりも美しく優しい。そんな、妖精をもって生まれたのが僕の自慢。




どうしてお前の妖精は醜いんだ!お前の心が醜いのか!そんなやつ必要ない。出ていけ!


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