第3話
「マスター、マスター、起きてくださいませマスター」
朝、僕を起こしたのは新しいドレスを身につけたサリア。セーラー服をイメージしててスカートは継ぎ接ぎ。可愛いサリアに癒されながら僕は数回瞬きをして目を開けた。
「うなされておりましたがマスター大丈夫ですか?」
「うん、両親の夢を見たんだ。僕とサリアを捨てた両親。でも部屋を用意してくれただけましなのかな」
「私はマスターといられるならどこへでも参りますわ」
サリアは変わらず優しい。僕達は幸せだった。
「マスター間もなくマスターの二十歳のお誕生日ですわね。私、お祝いしますわ」
二十歳の誕生日。そう、二十歳の。僕はサリアを人差し指で撫でた。サリアは嬉しそうに目を細めた。可愛い。
僕は着替えて朝食をとる。フレンチトーストにハーブティー。サリアでも作れるのがフレンチトーストだった。牛乳と生クリームどっちにするか迷う姿が可愛い。
「サリア、出掛けようか」
「またですか?珍しいですわね。マスターが連日続けて出掛けるなんて」
「いいじゃないか。だって、サリアといたいんだ」
サリアは嬉しそうに羽根をぱたぱたさせた。サリアもおめかしするのを見てやっぱり普通に世間的に綺麗な方がいいのな?
「あ、マスターいけませんわ!私はマスターの好きな美しさが好きなのです」
「そうだね、ありがとうサリア」
サリアと出掛けるとやっぱり嫌な顔をされる。どうしてみんなわからないんだろう?サリアはこんなに美しく優しいのにどうして?
「あら?ごきげんよう!お久し振りですわね」
僕達の前にいたのは誰もが振り替えるほどのまぶしい妖精をつれた眉目秀麗な男。その妖精はキラキラ輝きながらサリアの周りを飛び回る。
「まぁ、まぁ!!なんて可愛らしいお洋服でしょう!素敵ですわ。マスター、私もこんな洋服欲しいですわ」
「ダメだよ。青柳君の手作りだからね。俺は裁縫出来ないんだ。ごめんね?」
僕は目を合わせたくなくて俯いていた。生理的に嫌いなやつ。絶対誰にでもいるはずだ。
「マスター、大丈夫ですか?」
「サリア、行こう」
「逃げないでよ青柳君。君はサリアちゃんをこのままにしていいのかな?せっかく綺麗な妖精を手にしたんだ。美しくあってほしい、そう思わないのか?」
「お前に何がわかる!?サリアはこのままでも綺麗だ!そう思わないならお前の目が腐ってる」
絞り出すように出た僕の声は震えていて惨めだと思った。ああ、そうか。僕はどこかでサリアを美しく思えなかったのかもしれない。多数に押されて僕は自分の目を信じられなかったんだ。
「マスター、マスターしっかりしてください!私は…私はマスターが大好きなんです!マスターが笑ってくれるなら何でも出来るのです。私は醜いですか?汚いですか?マスターが愛してくれたのは私の見た目ではないですよね?」
本当に良くできた女だと思う。僕には勿体無いくらい美しくて優しい。僕は涙が出た。
ねえ?サリア、君が人間だったらこんな僕を今みたいに愛してくれたのかな?
惨めで自信がない僕を……。サリア、僕はこの二十年君といられて幸せだったんだ。
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