ACT:分岐Ⅰ ラストナイト・エンベローダー

最終話 ラストナイト・エンべローダー



 それにしても…ここは学校の何なのだろうか。校舎内は電気が点いておらず、スイッチを押しても全く反応しない。おそらく電気が通っていないのであろう。

 そのため、自分がどこの部屋にいるのかわかっていないのだ。俺は、念のため自分の持ち物を確認してから前へと進んだ。教室名が煤けて見えないため、中の様子で判別することにしよう。できることなら、校長室には隠れたくない。自慢じゃないが、俺は、小学校の時、約100回以上校長室に呼び出されたことがある。いやというほど入ったから、きっと神様も許してくれるだろう。

 なんてそんなことを考えていると、一つだけくっきりと読める部屋があった。

「…理科室。」

理科室か。懐かしいな。ここに来たのって何年振りだろうか。俺は中高生のころ、とても理科が大好きだったのだ。勿論、好き、ということと得意、ということは全くの別物なのだが。 

 

 ずっと校舎を巡っているわけにもいかず、俺は兎に角そこに隠れることにした。

「ガラガラッ」

アニメでよく見るような典型的なドアだ。おれの高校も、こんな感じだった。そういえば、高校で思い出したのだが、この小学校は小学校と言っている割には高校っぽい雰囲気だ。

 

_____________ドアを開けて進むと、いわゆる普通の「理科室」が広がっていた。しかしそこには、何故かとてつもないほど、「見覚え」があった。無意識のうちに奥に進んで行くと、何かが足に引っかかって転んだ。「躓いた」のだ。

その時。何かが目の前で、「ひいっ!」と声を上げた。思わずその声に顔を上げた。


 少年だ。声変わりもまだしていない、見た目は小6だろうか。どちらにしろ、驚き方から察して、こちらの味方であることには違いなさそうだ。とりあえず、話しかけることにした。

「…お前も?」

「うん。お前もってことはお前も?」

…こいつ、なかなか生意気だ。年が離れている相手に「お前」とは。俺は、愛想笑いを浮かべ、上を向いて呟いた。


「そっか、大変だな。お前も。俺も。」

「うん。たくさん人がいるから。誰からにしようかすごい悩むからほんとに大変。ま、まずは『異常な奴ら』を食べなきゃね。仕事だから。」


………………………え?




━━━━━━━━2132年12月31日、警察による、「OUMA」への強制捜査が実施された。しかし捜査を開始した時点で、すでにアジトはもぬけの殻。

 

 驚くのはここからだ。そこには、見た者に吐き気を催させるほどの、あるいはそれ以上の者が広がっていた。


 そこには、たくさんの「異常力ワールド・ループ所持者」と、その家族、さらに、「人外程度生物ミス・ワーク」たちのものと思われる骨、服が散乱していた。


それにより、各区の「ワールド・ループ」は活動を縮小し、そのため各区によって時間差が見られるようになった。


 いい意味で、「自然を取り戻した」、悪い意味で、「死亡率増加への直結」。

彼らの存在は人類にとって絶大なものだったのである。


梢区では、「ワールド・ループ対策法」が廃止され、所持者との平等化を進めている。

ほかの区でも様々な取り組みが進んでいる中、観讃井区では何一つ時間差への対策がされていなかった。





「あの話」は、その後の世界の何年後かを描いたものである。





                  完

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ワールド・ループ 小説版 Lewn(レン) @setokousuke

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