002

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 現在夜11時。もうほとんど歩行者もいない。ただ今、俺──魅霊翔陽みれいしょうようは、今から30分歩き、家に向かうか、45分待ってバスに乗るか悩んでいる。バスに乗れば楽だがお金がかかる。歩けばタダだが苦になる。ものの30分考えた結果、歩くことにした。え?おまえ天然だろって?何のことかな?そんなことを考えていると、目の前で、「ガンッ」と音がした。直後、顔面に強い痛みが襲ってくる。電柱にぶつかったのだ。ようやく、天然という意味が分かった気がする。

 しばらく歩いていると、だんだん自分の家が見えた。しかし、その隣には、無いはずのものがあった。疲れているのか。そう思っていったん家に帰った。気になって、カーテンを開けてみると、そこには、小学校のような建物があった。ちょうど夏の日。半袖ハーフパンツに着替えると、家を出て、隣の建物に向かった。


 建物は、大きい。学校のような見た目。広い校庭。門の脇には、学校名は煤けて見えないが、かろうじて「小学校」とだけは読める。やはり、ここは小学校なんだな。中に入って、周りを見回す。塀には不審者防止のためか、有刺鉄線の様なものが張り巡らされていた。とたん、真後ろに殺気を感じた。

「誰だ!」

 そう言おうとした一瞬前、相手が口を開いた。

「ようこそ、逢魔が時小学校へ。」

 だめだ。こいつやばい奴だ。用心して、俺は後ろを向いた。その声の正体を見て、俺は息をのんだ。なんとそこには、可愛らしい少女が立っていた。何故かその子は、宝石商のような服を身にまとっていた。少女は口を開くと、

「今から、逢魔が時小学校でかくれんぼを行ってもらいます。」と告げた。

「…は?」

 いやいや何を言っているんだ。今から?ここで?かくれんぼ?

 …無理無理無理無理。こんな遅い時間には寝なくてはいけないんだよ。

 途端に良い子精神が目覚めた。まあ、そんなことはどうでもいいのだけれど。

 しかし、なぜこんなに胸が痛いんだろう。この建物、どこかで見たことあるような気がする。俺の高校か?それとも、大学?少なくとも、何か見覚えがある。

「…ぅあっ…まさか、あいつが?ここに…?」

 俺はとあることを思いだし、その少女に話しかけた。

「このかくれんぼの参加者を教えてくれ。」

 少女は、このくらいなんてこともない、というふうに、どんどん参加者を告げた。

「深澤来夏、アンシャール・ルスワール、水上圭、あとはあなたです。」

「…まさか?いやただの偶然か?でも俺の近くにいる…?」

 自然と、涙がこぼれた。


「分かった、参加する。その代わり………いや、何でもない。」

「分かりました。それでは、1時間待ちますので、その間に隠れてください。制限時間は24時間。その間に見つかったら、覚悟しておいてください。」

 さらっと怖いことを言うな。それより、あいつがいるだと…?

 俺は覚悟を決め、校舎内に入った。そして、最期の時のために、今、この言葉を送ろう。

「じゃあな、小百合。最期まで好きだったよ。」

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