金の雨
藍上央理
第1話
@ts_p 「陵辱涙:眼光(まなざし)」
逃げられないことは分かっていただろう? 先生にそう囁かれた時にどう反応すればよかった? ある日突然、背後から組み伏せられ、自由を奪われてから始まった凌辱の日々。先生の眼光(まなざし)が、今なお体の奥深くをうねるように穿つ。その瞬間から先生に囚われた——
@ts_p 「陵辱涙:光もあらぬ」
光もあらぬ、陰もささぬ。目隠しの中の瞳に、なにが映っているのだろうか。お前の薄紅色に染まった唇を怒張する醜いもので凌辱する。色素の薄い肌が紅潮として、お前が息もできぬほどに苦しんでいるのが、手に取るように分かる。まだ未熟なすぼまりを犯すにはおまえの心をくじかねば。
@ts_p 「陵辱涙:底なる澱に」
濡れたすぼまりに冷たい金属が差し込まれる。嫌だとくぐもって唸る声に先生は興奮して、鉗子を根元まで押しこんだ。流れる涙が痛みを伴う底なる澱に積み重なる。嫌がったお仕置きだと鉗子を見せられ、俺は身震いした。今まで築いてきたものや克己心がくじけ、崩れていく音がする。
@ts_p 「陵辱涙:黙(もだ)せる顔の」
お前のかみしめる唇がさらに白くひきつる。少しずつ咥え込むすぼまりの広がりに、うずもれていく太い熱塊。そのうねる動きに揺らめくお前の腰が恨めしい。どこで覚えたのかこの淫乱なうちなる蠢きに知らず嫉妬する。黙(もだ)せる顔の長き睫毛に見えぬ影を追い、なお責める。
@ts_p 「陵辱涙:胸に十字を」
先生は俺の胸に十字を刻むと言って、金属の爪をあてた。懺悔をしろと、覚えのない行為を責め立てる。誰にこの体を許してきたんだと狂おしく切ない口調で突き上げる。先生が初めてだと泣き晴らし叫びつくし枯れた声で訴えても届かない。貴方を狂わせ乱れさせているのは俺だと気付いた。
@ts_p 「陵辱涙:面変わりして」
一筋の汗に乱れた髪を濡らし、お前はこの何日にも及ぶ責め苦に面変わりして、その憂えた眼差しに色気が灯る。火照った薄紅色の肌、男慣れしてきた腰付き。吐精を許してこなかったお前のここはこんなにも熱い。細い腕をつかみ、脇の茂みから胸の突起へと舌を這わす。愛撫だけでは足りない。
@ts_p 「陵辱涙:つめたい波」
診察台に押し付けたお前を背後から穿つ。上向け愛おしく紅く染まった尻たぶに己の腰を打ちつける。甘い声をもらしながら火照った体に時折冷たい波が走るよう、お前を虐めることを忘れはしない。痛みなくして快感を得られないようにしたのだから。望み通り、お前を拘束する革を引き絞る。
@ts_p 「陵辱涙:まことをしるや」
先生を見つめる目に尊敬と憧れと、もっと違う何かがあったことを悟られたくない。犯され、辱められたいと願う自分の心を晒したくない。きっと、貴方に嫌われてしまう。腰のうずきと胸の高鳴りが貴方の欲望を呼び醒ましてしまったにせよ。貴方は俺の陵辱されたいと願うまことをしるや。
@ts_p 「陵辱涙:金の雨」
それがたとえ俺の勘違いだったとして、今このひと時、先生を独占している悦び。歓喜にわななく肉体が愛しい。すべて投げ出して貴方に捧げて、その行為一片一片を体に刻みこんでいく。革の痕のつく己の熱塊に欲情し、貴方を夢想しつつさらに縛りあげる。貴方のすべての行為が愛、金の雨。
@ts_p 「陵辱涙:罪なきなみだ」
ほろほろとお前の頬を伝う雫を舌で舐め取る。罪なきなみだがお前の穢れを洗い流すだろう。もとよりお前は清い羽根を折られた天使のように、清冽な美しさで圧倒してきた。どんなに恥辱に汚そうと、凌辱しようと、儚い腰の線を震わせて雄の精を飲み下し、私の罪をも飲み乾して。
金の雨 藍上央理 @aiueourioxo
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